かわうそ日記 ( 2002年05月 ) こよみのページ こよみのページ
たのしそう?  (2002.5.29[水])

 「○○さんは、いつも愉しそうだね
と言われた。社会人の条件反射みたいなもので「いや、そんなことも」と否定しかけて、思い直した。
そう言われれば、愉しいかもしれない・・・。

 嫌なことが無いかと言えば、無いことも無いのだが、毎日思い悩む程のものは幸いにして今は無い(結局無いんじゃないか!)。
 何がそんなに愉しいのかと聞かれると答えに窮するのだが、その気持ちを代弁してくれる嬉しい本を読んだことがあるので、その一部を紹介してみる。

  たのしみは まれに魚烹て 児等皆が うましうましと いひて食う時
  たのしみは そぞろ読みゆく 書の中に 我とひとしき 人をみし時
  たのしみは あき米櫃に 米いでき 今一月は よしといふとき
  たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時

 「たのしみは」で始まる橘曙覧の独楽吟。全部は紹介出来ないが佳い詩ばかりである。読みながら涙が止まらなくなった本である(読んでいたのが通勤電車の中だったので、恥ずかしかったな)。私が「愉しい理由」もこんなつまらないことばかりである。愉しいんだから、いいよね。

追記.
昨晩久しぶりに交わした大阪の姉との長電話の中に、独楽吟(どくらくぎん)の内容も登場。通勤電車で泣いた件に関しては伏せておいたが。


田んぼの月見  (2002.5.28[火])

 土曜日の夜、月見に出かけた。満月には1日早い、幾望の月の晩。
目的地は、車で片道2時間弱。大山の千枚田である。日曜日だと、翌日を考えて時間が気になりそうなので、1日早い月見とした。

 初めての道であったが迷うこともなく到着。空には雲一つ無く、月明かりの中、いくつかの輝星だけが星座の在処を示していた。
 車を止めて、棚田の間の作道を下る。騒がしい程の蛙の声に包まれながら、なぜか自分の足音が耳に障る。夜の田んぼに人の足音は異質だからだろうか。

 200mほど下ったところで、草の茂った広めの畦があった。座り込むと夜露を含んで草が冷たかった。
田んぼの月 闖入者の発てた物音に蛙の合唱を止む。やがておずおずと様子をうかがうように一匹が鳴き出し、それに呼応するかのように一匹また一匹合唱隊は戻って、程なく全員による大合唱となった。
 聴衆としては受け入れられた気分になって蛙の歌声に耳を傾ける。傍らにはさざ波に揺れる田んぼの月があり、天上には、静止した月がまぶしく輝いている。佳い月見になった。

 田毎の月を眺めようと思って出かけてきたが、蛙の歌声に浸りながら月を眺めていると、田毎の月は蛙たちのもののような気がした。私は、蛙の月見のお相伴に与っただけかもしれない。
 蛙たちとの月見は夜更けまで続き、楽しい気分で田んぼを後にした時には、天上の月が少し西に傾き始めていた。


月と光冠  (2002.5.23[木])

光冠のある月 舞鶴にいた頃に比べて、東京では帰宅時間が遅くなった。
そのせいか、「夜景が増えたね」と言われるかわうそ日記。本日もまた夜景。
本日の写真は帰宅途中に見上げた月。通り過ぎる雲がほんのり色付いている。月の光冠だ。

 改札口を出ると、電話が鳴った。時間は10時を少しまわったところ。現在6ヶ月の乳児への最後の授乳を済ませ戦いが済んだという家内からの報告。だいたいこの時間帯が多い。昨日と一昨日は電車の中で電話を受けられなかった。
 今バスが来ているから、15分後に。起きていたらね!
と言って電話を切る。丁度そのとき、乗るはずだったバスが走り出した。
 バスに逃げられた
歩きながら報告の電話をかける。電話を切って1分と経っていなかったので、さすがに家内も起きていた。バスが逃げてくれたお陰で安心して電話が出来る。
歩いてもさほどの距離でもないし、かえって良かったのかな。月も出ていたし。

 電話もできたので、急いで帰る必要もなくなった。月もきれいだし、ちょっと道草を喰って、今日の写真が出来た。

追記.
月の大好きなMさんへ。昨日のメールの返事をまだ書いてないので、この写真を見ながらもう少し待って下さいね。


「自裁」という言葉について  (2002.5.21[火])

 2日前に「あなたは?」と題した日記で、自裁という余り使わない言葉を使ったには理由がある。あれはまだ22,3歳のころに「静かな自裁」というノンフィクションを読んだ記憶があったからである。
 昭和49年に海洋調査用の潜水艇として試作された「うずしお」に事故があり、乗り組んでいた乗員2名が亡くなり、その2日後に潜水艇設計の総責任者が自殺した事件があった。その本は責任を感じて自殺した技術者がなぜ自殺したかを追ったものであった。
 その技術者(名前は覚えていません、「A」と書かせて頂きます)は戦前から艦船設計一筋のエキスパートであったが、当時は既に第一線を退き設計の総責任者といっても名誉職的なもので、実質的にはアドバイザーとしての参加であった。潜水艇の事故もいくつか小さなトラブルがあり、それに慌てた乗員が開けてはならないバルブを開けてしまったという誤操作が直接の原因であった。
 設計上にも多少の問題はあったと考えられても、その責任からは一番遠いところにいたように見える「A」の死が、その本の著者には引っかかったのだろう。

 本は、生前の「A」の言動や、書簡、周囲の人々からの訊きとりによりなぜ「A」が死を選んだか、その思考のあとをたどる形で進む。
 事故はあくまでも乗員の誤操作が原因と見なされた中、なぜ「A」は責任をとったのか。本人で無い以上本当のことは闇の中であるが、「誤って、開けてはならないバルブを開けた」と言う事故に対し、「開けてはならないバルブを開ける可能性のある場所に残した」ことへの設計者としての責任ではないか。人がその責任を裁かない以上、裁くのは自分しかいないと考えての自殺だったのではないか。

 人間は生きていく上で、多かれ少なかれ何らかの罪を犯して行くものだろう。罪の軽重を秤ではかれるとしたら、人は自分と他人の罪の重さをどのように量っているのだろう。社会人に成り立てのころ、この本を読んで、自分の秤の分銅の重さを考えた(今もって、その重さを量りかねているが)。
 偶然、今回のニュースでこの本のことを思い出し、自裁と言う言葉を使うことにした。
 今回は、日記という内容では無くなってしまったが、たまのことなのでお目こぼし願いたい。また、「静かな自裁」も多分和歌山の本宅の本棚で埃をかぶっているはずで、内容については以後の自分の勝手な思いこみが紛れていると思う。正確を期したい方は、直接その本に当たっていただきたい。


行って来ました柿田川・その1  (2002.5.20[月])

 静岡県の柿田川に出かけてきた。かねてから一度行ってみたいと思っていたので、近くに越してきたのを機に足を延ばしてみたのだ。

柿田川のトンボ 日曜日でもあるし、大分観光地化しているらしいと聞いていたので覚悟していたが、湧水源付近では団体の観光客の波にもまれてしまった(幾組もの「団体」にもまれたのだが、もまれながら耳にした会話の内容がどれもこれもよく似ていた。団体行動って、思考まで画一化するのかな)。

 川の波ならぬ人の波で、上流域ではあんまりのんびり出来無かったので川に沿って河口まで下る(ま、1.2kmしかないけど)。こちらは一転して、無人。一人でのんびりすることが出来た。
 色々書きたいことも有るが(写真も沢山撮ってきたし)、書き出したら超大作になって眠れないかもしれないので、本日は河口付近の藪の中で撮ったトンボの写真(露出オーバー!)で終わる。詳しくは後日(・・・ほんとかな)。


あなたは?  (2002.5.18[土])

 「元気そうだね」
草や木に声をかけることがある。仕事帰りの夜道ですれ違う猫にも「にゃっ」と挨拶。
馬鹿げた事だろうが、時には「ええ、あなたは?」と言葉が返ってくるような時もある

セイヨウタンポポ 今週、日本で4例目の狂牛病の牛が見つかった。翌日、この牛の生体検査を担当した獣医師の自殺が報じられた。自裁と言うべきだろう。
獣医師は狂牛病とこそ断定はしていないが、検査の結果何らかの疫牛としてこの牛を判定している。この判定があったが故に精密検査が行われ、狂牛病と判明したのだ。非難されるような点は無いし、周囲もそう思っていたようだ。
だが彼女は責任を感じ、自裁した。

あれから、もし自分だったらと考えている。だが、考えても考えてもきちんとした答えが見つからない。
 「あなたは?」
目にした花が不意に問いかけてきたら、私はどんな答えが出来るだろうか。


春の風(邪)  (2002.5.15[水])

 また風邪をひいている。
 風は好きだが、風邪は好きじゃない。でも風邪には好かれているかもしれない。

 「好き嫌いしないで、何でも食べないと病気になるよ」とは子供の好き嫌いをたしなめる言葉。私がこれを使うと、ある種の説得力がある。反面教師としてだが。

 私は好き嫌いが多い(自信を持って言える)。私が「好き嫌いが多い」と言ったら、「嫌いな物がいっぱいあるのは知っているが、好きな物も有るのは知らなかった」と知人に言われたことが有る。そういえば確かに。なかなか気の利いたことを言う物だと感心したことがある(今は、「穀物が好き」と答えることにしている)。

 週末にひきこんだ今回の風邪の病状は比較的軽い。体もあまりつらくは無いのであるが、鼻水が止まらないのには閉口している。この 4日間、ほとんど10分おきに鼻をかんでいるので、赤鼻のかわうそになってしまっている。で、病気の間は「栄養のバランスを考えた食生活」などと殊勝なことを考えるのだが、平熱に戻るとまた忘れるんだろうな。
 何はともあれ、あと2〜3日は、殊勝に栄養のバランスなど考えて好き嫌いの無い食生活を心掛けてみよう。

追記.週末は、日帰り小旅行の予定。それまでには直すぞ。


田毎の月・田圃の季節  (2002.5.9[木])

季節のページ5月号に「田毎の月」という言葉を入れた。

 先月末頃通勤電車の中で読んでいた本の中の蕪村の句に「田毎の霜」という言葉があり、この言葉は田毎の月を意識したものという解説を読んで、季節のページにちょうどよい言葉と、田毎の月の方を早々に使ったのである。
 不思議なことに、使おうかなと思い始めた頃から来訪帳経由で田毎の月に関するコメントが3名の方から寄せられた。偶然にしても幸先がよい。

 頃はまさに田圃の季節。田植えの終わったばかりの田圃に映る満月を眺めるなんて、いい気分だろうな。今月の満月は5/26、日曜日である。24〜26の週末あたり、「田毎の月」の狙い目である。

田圃の季節(もう一つの偶然)
 前回の記事でも使った「田圃の季節」という言葉、今年の年明け頃本宅への帰省の折りに立ち寄った本屋さんで同名の写真集を見つけて以来、このほのぼのとした優しい語感の言葉が気に入ってしまった。もちろん写真集自体も。
 「田毎の月」からの連想で昨夜、写真集「田圃の季節」を取り出して眺めていた。各地の田圃の写真が並んでいるわけであるが、撮影地を見ていると千葉県鴨川が多い。
 最近千葉県民となった私だがまだ県内の地理疎い。地図を引っぱり出して撮影地を当たってみると、車で2時間弱で行けそうなところである。私にとってはうれしいもう一つの偶然。

 今月末の満月には、ちょっと田圃を眺めに足を延ばしてみようか考えているところである。


田圃の季節・ケロリンの季節  (2002.5.4[土])

 本宅到着は1日と2日の日付が変わる頃。
 勝浦の駅からタクシーに乗る。家の少し手前でタクシーを降りて少し歩いた。雨上がりの街の様子に、家の前まで乗り付けるのがもったいないような気がしたから。
 家への近道は農道。田圃の間の道をまばらな街灯の灯りを頼りに歩く。雨上がりの空にはまだ星は見えない。田植えの済んだばかりの田圃から蛙の声がかしましい。昨秋、姿を消した我が家のケロリンも、この声の中にいるだろうか。
田圃と雲間の夕日
 一夜明けて5月2日、小雨後曇り。妻の言によれば、プランターや雨樋付近に雨蛙が時々出没するらしい。ケロリンかなと思うが定位置の傘立てに戻ってこないので偽ケロリンかも、定かではない。偽物か本物が冬眠中に定位置を忘れたのか、いずれにせよ雨の日の蛙たちは忙しく、家の近辺にその姿は無い。
 午後からは、本宅近くの観測所へ顔を出して2時間ほど仕事の邪魔をしてきた。7年前に転勤になって出ていった時と余り変わりない(庭の大きなフェニックスの木が無くなっていたけど)。
 帰り道、ようやく雲が切れた空から太陽がのぞき、水を張った田圃が日の光を映していた。田圃の季節、そしてケロリンの季節は始まったばかり。

追記.
「ケロリンてなに?」と言う方へ。No.178,No.179に登場します。


電車のはなし(二題)  (2002.5.1[水])

その1 (ちょっと楽しい)
 転勤してほぼ1月。久々の電車通勤にも慣れ、行き帰りの貴重な読書タイムとなる。
 他に出来ることがあると、そちらに気を取られて本に集中出来ないことがあるが、電車(ことにラッシュの)の中では気が取られるものが無いので、考えようによっては理想的な読書空間かもしれない。
 ただ、善い本に巡り会って、その中に没入してしまうと、乗換駅で乗り換え口と出口を間違えたり、行く先を間違えたりと問題点もあるが、おおむね楽しい時間が過ごせているみたいだ。

その2 (ちょっと不愉快)
 昨日、連休で本宅に帰省するための切符を買いに駅のみどりの窓口に行った。
 入った時には比較的空いていたが、「指定席申込書」なるものに時刻表を引きながら必要事項を書き込む間に何人かが窓口に並ぶ。
 7分ほどかかって往復の申込書を書き上げる(田舎なので、乗り継ぎ等が多くちょっと大変)。列の末尾に並ぶと、私で5番目。まあ仕方がない。

 それから30分後。私はまだ並んでいた。私の前の4人中3人は、申込書などへの書き込みをせず、口頭で窓口の係員へ、「×日の何時にどこどこへ行きたいけど、・・・」の様にして申し込み、そのたびに係員は時刻表を引きながら、何度もやりとり。
 発券したかと思えば、「あ、お金の持ち合わせがないので、さっきのグリーン指定取り消し・・」と、なかなかやってくれる。
 結局、自分の切符購入まで約45分が経過。
 申込書に自分で調べて書き込んだ人間と、そうでない人間が等しく「並ぶ」のって、なんか不条理に感じる。ちょっと不愉快(さ、いやなことは忘れて連休に突入するぞ!)。


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