かわうそ日記 ( 2003年11月 ) こよみのページ こよみのページ
三連休  (2003.11.25[火])

この連休は鳥取に出かけていた。
久々の鳥取で時間があれば、昔日記にも書いた定有堂書店に足を運ぼうと思ったが、意外に忙しくてその時間がなかった。結局、2日間の鳥取滞在ではホテルと体育館の往復が全てで、何処にも出かけていない。

出かけなかったことに関しては、忙しかったばかりではなく、時雨模様の天気で、予想よりも寒く出歩くのが億劫になってしまったというのも幾分かある。東京へ戻ってから思い返せば、億劫がらずに動けばよかったようにも思うが、後の祭り。元来が出不精だから仕方ないとも言える。

さて、連休の最終日には千葉に戻っていた。寒かった鳥取から帰ってきたから、暖かいと感じるかと思ったが、そうでもなかった。日本海側だけが冬というわけではないのだから当たり前なのだが。

久々に近所をうろつくと、自宅周辺の木々もすっかり晩秋から初冬の雰囲気。公園では桜紅葉というのだろうか、紅葉した桜の葉が枝に、地面に広がっていた。

夜、買いものしたスーパーの袋を手に下げで再び公園を通ると、赤色や黄色に色づいた桜の葉が時雨に濡れて、街灯の光の中に浮かび上がっていた。

桜紅葉夜桜見物でにぎわった春の宵とは違い、街灯に映し出された桜の紅葉を眺める人はいない。

公園の外周に並んだ木製のベンチだけが黙って、桜を見ていた。

後何時間かで、初冬の三連休が終わろうとしていた。


木枯らしの翌日  (2003.11.18[火])

昨日は、雲一つ無い朝だった。
今朝はと言うと、雲が一つくらいしかない朝だった。

昨夜の天気予報の通り、放射冷却で寒い朝のはずであるが、身体が感じる寒さはさほどではない。風が無いからだ。
日陰に入ればひんやりはするのだが、陽が射す場所は柔らかなぬくもりを感じる朝である。

昨日は東京に今年最初の木枯らしが吹いたとニュースが報じていた。確かに朝から冷たい風が吹き、けやきの枯れ葉を雲一つ無い空へ舞い上げていた。
あの風が無くなった分だけ、暖かな朝。

街角の小さな池には木枯らしに吹き散らされて葉の減った木々の枝の間だから、吹き散らされて水面に浮かんだ枯れ葉の上に、まだらの朝日が射し込んでいた。
朝日落ちて


冬の木の花  (2003.11.14[金])

柊のこころこころをつなぐ香よ  鳥井おさむ 

柊咲く公園を歩いていると花の香を感じたと思った。何の花だろうと思ったときにはその香りは消えていた。
ほんの狭い場所だけにその香りが漂っていたようだ。

注意して数歩戻ると、再びその香りを感じた。あたりには白い椿の花が咲いていたが、椿の香りとは思えない。香りを頼りにもう一度注意して周囲を見回すと、棘のある暗緑色の葉の陰から、白い花がのぞいていた。

金木犀の香りと錯覚しそうな、小さな花をつけていたのは柊。鋸状の棘のある葉で、邪を払う霊力を持つと考えられる柊。文字にすれば木偏に冬、文字通り今が盛りの木なのかもしれない。

その特徴的な葉の形と目をひく珊瑚色の実に霞んで普段は目立たないその花が、気付いてくださいと言いたげに、あたりに香りを漂わせていた。


カメのはなし  (2003.11.12[水])

私の家は、カメづいている。以前にも書いたし、写真も載せている通り現在和歌山の本宅には三匹の亀の子がいる。どこかでもらわれてきたものでも、買われてきたものでもない。正真正銘我が家で孵った亀の子である。一匹は去年、二匹は今年生まれた。

道ばたで「拾われてきたカメ」が卵を産み、それが孵ったものだ。カメを拾ったのはじいちゃん(妻の実父)。一度ではなく、去年と今年の二度もカメを拾ってきた。そしてその両方ともが卵を産んだのである。

二度もカメが拾われてきたと言うことで「カメを拾う」と言うことがよくあることのように思えてしまうが、世間ではそういう話をあまり聞かない。ひょっとして、みんなも拾っているが、その事実を隠しているのかもしれないが、多分そんなことはないと思う(隠すとしたらその理由は?)。

カメを拾うじいちゃんの血をひいているのか、家内もめざとくカメを見つける能力を持っている。
今月初めに本宅に帰省していたおりも、車で国道を走っていると、「あ、カメがいる」と助手席の妻。確かに橋を渡っている最中だったので可能性はあるが、車の窓から見える川面までの距離は30m はあるはず。
だが、以前にも同じように遠方を泳ぐカメを車の窓から発見している妻の実績を思い出し、橋を渡ったところに車を止めて確かめに行くことにした。と言っても実際に行くのは私一人。発見した当の本人は発見したことで満足し、後部座席の息子はカメよりも胃袋が気になるらしく、「お腹空いたー」を連発していた。

歩いてみると、橋の上までは結構距離があった。数分かかって橋の上にたどり着いて川を見下ろしてみたがカメは見えない。妻の発見の報から数分が経過してしまっていたのでもういなくなってしまったのかもしれないと思い始めたとき、水中からプカンと黒いものが浮かび上がってきた。しかも大小二つ。そして少し離れて更にもう一つ。

カメだ。しかも三匹。先に浮かんできた二匹のカメは小さな方が大きな方の周りを泳ぎ回って、時々大きな方にぶつかって行く。大きな方はゆっくり水の中で足を掻きながら、ぶつかってくる小さいカメをいなしたりしている。争っているのではなく、じゃれているようだ。

二三分、楽しそうな二匹+一匹のカメを眺めていた。やがて離れていた一匹が水に潜り、じゃれていた二匹もやや遅れて水の中に消えていった。小春日和の日差しの下、緑色の水の中にも連休中の親子がいたのかもしれないと思えて、なぜか嬉しかった。

あの日からもう10日も経とうとしているが、カメの話だからのんびり書いてもいいよね。

追記.
そういえば、この「カメを呼ぶ家系」の妻と結婚したためだろうか、思い返してみると結婚後カメを見かけることが増えた気がする。昼休みのランニング中に浜離宮の堀(汐留川と言うらしい)で泳ぐカメを見かけるし、昨年は出張先の島で殆ど毎日ウミガメを見ていたし・・・。
「カメを呼ぶ家系」は感染性があるのかもしれない。

追記二.
クレーンゲームで家内が大きなカメのぬいぐるみをとってきた。それも3つも。なぜかカメだけは狙ったとおりにとれたのだとか(3回チャレンジして3個獲得!)。
先日、その同じぬいぐるみが売り場に並んでいた。価格は1980円。妻はご満悦であった。


路上の花  (2003.11.10[月])

外へ出ると、初しぐれがアスファルトの道を濡らしていた。
朝だというのに日の出の前のように薄暗い。

路上の花しぐれの雨脚は弱く、色彩のうすい街の風景の中に細い斜線を幾本かひくほどの量である。手にした傘をさすのは何か大業過ぎるように思えて、傘は閉じたまま、まだまどろんでいるかのような街を歩き出した。

数分歩けば、いつもの公園。春、夏と花をつけた木々の多くは葉を落とし、今まではそれらの木の陰に隠れていた常緑樹の暗緑色の葉が公園の主役となりつつある。

 ふと咲けば山茶花の散りはじめかな 平井照敏

公園の道の上に花が咲いていた。しぐれに濡れた煉瓦の道に白い花が咲いていた。
白い花は枝からこぼれた山茶花の花びら。地に落ちて、再び白い花を咲かせていた。
地上に咲いた花を見て、ようやく枝に咲く山茶花の花に気がついた。
そして、山茶花の花を見上げて、ようやく冬の入り口にいることに気がついた。


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