かわうそ日記 ( 2004年08月 ) こよみのページ こよみのページ
ネコジャラシ  (2004.8.11[水])

猫じゃらし日盛りの暑さはそうでもないが、朝夕の風は盛夏の頃のそれが含んでいた「熱気」が失せ、夏も峠を越えたと感じるようになった。
そう言えば、東京の大半をアスファルトに覆われた地面の隙間に生える雑草も、夏に蓄えた光を種子に結実させたものが増えている。秋の兆し。

ある日、もうすぐ3歳をむかえる下の息子が、散歩帰りに土産をくれた。ネコジャラシの穂である。
それから数日後、花火見物の帰り道、手をつないで歩く息子が、空いたもう一方の手を突き出すようにして道路脇を示した。

  ネコジャラシ、ネコジャラシ

夜の闇の中に、数十本のネコジャラシの穂だけが、車のライトに照らされて浮かび上がっていた。

数十年も昔、学校帰りの道で目にしては意味もなく引き抜き、その穂を振り回していた馴染みの雑草、ネコジャラシ。
昔馴染みの雑草は幸いに東京でもやはり馴染みの草。道路脇のわずかな土の上にも根を張り、夏の太陽の光を黄金の穂に結晶させている。
場所が変わり、時代が変わっても、その営みは変わらない。
今年もまた、秋の始めの風が、ネコジャラシの穂にじゃれつきながら吹きすぎる頃となった。


ページトップ by かわうそ@暦 (PV since 2008.7.8) Powered by HL-imgdiary Ver.3.00