かわうそ日記 ( 2006年03月 ) こよみのページ こよみのページ
ハマグリの夢  (2006.3.20[月])

蜃気楼
空に浮かぶ船
今日は昼からの出勤。天気はいいが寒の戻りか気温は低い。
仕事へ向かう車の窓から沖を眺めると、空中に浮かんだような船が見える。
冬場によく見る蜃気楼の一種だ。

紀伊半島の先端に近いこの場所は、黒潮が陸地に最も近づく辺りである。
黒潮は暖流である。その暖流へ向かって冬の間は、山で冷やされた冷たい空気が海へと流れ出す。

そして暖流と冷たい空気が出会った場所で、蜃気楼が起こる。下方蜃気楼と言うやつだ。

三月とはいえ、今日は寒い。空中に浮かんで見える船の様子からすると、海の上もまた寒そうな日である。

日が沖天にさしかかる頃、海の底にも光が届く。
その差し込む光が一頃より増えた気がする。
昼飯にと吸い込んだ水の中の甘いプランクトンの量も一頃より増えた気がする。
水の上の世界に、春という季節が巡ってきたようだ。

どれくらい前だったか、もうはっきりと思い出せないほどの昔、まだ小さくて浅い海の砂の中にいた頃には、波越しに揺れるお日様を眺めたことがあった。
お日様どころか、満ちてくる潮の中でお月様さえ眺めたこともあった。
あのころの住処は、水は浅く、その水は冬は冷たくて夏になれば熱かった。
水に温もりが戻る頃、それが春だと知るようになったのはそんなまだ小さな頃のことだった。

小さくて、まだ浅い海に住んでいた頃には、浜辺に住む子供らに捕まりそうになって、砂に潜ったこともあった。
暖かな春の砂の中に隠れ、砂の間から水を透かして見る浜辺から人影が消えるのをじっと待ったことが何度有っただろうか。
今はもう深い海に住み子供らに捕まる心配は無くなったが、あわてて潜り込んだあのころの砂の温もりがなぜだかとても懐かしい。

プランクトンの昼飯は美味かった。
たらふく食べて眠くなり、大きなあくびが一つ出た。
あくびは小さな無数の泡となって海の中を昇ってゆく。
私を追いかけ回した子供らは今はどうなっているのだろう。
子供らのその後の夢でも見ながら、一眠りするとしようか。
そう思うとまた一つあくびが出た。

夢と思い出の一つ一つが、細かな泡の粒となって海面へ昇り、蛤の夢の像を結んでいった。


蜃気楼の「蜃」は大ハマグリのことだという。
大ハマグリが吐き出す妖気の中に現れる幻の楼閣、そう考えられて生まれた言葉が蜃気楼だ。「大ハマグリが吐き出す妖気」と言うが、私にはあのツルリンとしたハマグリが「妖気」を吐き出す様を想像できない。
それにこの辺で見える蜃気楼の多くは「プカンと空に浮いた船」という不思議だがおどろおどろしくはない映像だから、なおさら妖気はそぐわない。
大ハマグリが・・・というのなら、「大ハマグリの午睡の夢」くらいのものだろう。

今目にした蜃気楼、はたしてどんなハマグリが見た夢なのだろうか?


開き忘れた春の便り  (2006.3.18[土])

春告草デジタルカメラのメモリーカードの中に撮したまま忘れてしまっていた画像が残っていた。
カードの中身をハードディスクに移しそこに写った画像を開くと、陽を浴びた梅の花が写っていた。
一月近く前の梅の花。受け取りながら、うっかり開封せぬまま忘れてしまった手紙を見つけたようだ。

梅の花が辺りから消えて久しい。
木の枝を彩る花は今はもう桜へと変わってしまった。
梅の花が届けてくれていた春の便りを、今の今まで開かないでおいた気がして、なんだかちょっと後ろめたいが、

 あなたの迂闊さなんて、もとより承知よ

と言うように、写真に収まる梅の花は笑っているようにも思えた。


今日は楽しい雛祭り  (2006.3.3[金])

お雛様一階からの長い階段を抜けると
そこは、ドラえもんだった


本当は長い階段ではない。段数で言えば14段。
でも「長い」としないと語呂があわないので脚色してみた。

今日は雛祭り。
我が家の大して長く無い階段を上るとドラえもんがいる。

 ドラえもん雛

だからドラえもんだけではなく、となりにはドラミちゃんもいる。
御内裏様とお雛様の関係からすると、ドラえもんと妹のドラミちゃんでは辻褄が合わない気もするが、多分モデルはドラミちゃんだと思う。

2月前に購入し(驚いたことに「人形の香月」製のれっきとした(?)雛人形である)、4歳児の視線より高い場所、つまり我が家の末っ子に気づかれない・・・いたずらされない・・・場所に置かれている。

一応、お雛様なので管理担当者は家内と言うことになるが、現在管理担当者氏の悩みはこのお雛様を、本日(雛祭り)以後も飾り続けるか否か。

お雛様を雛祭り以降も飾り続けるとお嫁に行き遅れるということが気になるのか。
お嫁に行き遅れることを気にする必要のある生き物は、我が家にはいないはずなのに。

さて、このお雛様、明日も階段の向こうに鎮座していらっしゃるでしょうか?

追記.
三月三日、今日はまた私の父の命日。無くなって三年が過ぎました。


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