かわうそ日記 ( 2008年11月 ) こよみのページ こよみのページ
薄化粧  (2008.11.14[金])

秋の終わりの陽の暮れは早い。
仕事を終えて外へ出ると陽はすっかり沈んでいた。
今日は珍しく、ほとんど定時に仕事が終えたにもかかわらずである。

夕陽なんてものが本当にあるのかと思うほど
近頃、沈む前の陽の姿を見たことがない。
本当に秋の陽は愛想なしである。
歩く足下さえ見えないほど辺りは暗くなっていた。
紅を刷く
手に提げた、いつ読むか判らない本を詰めたままの鞄が重い。
車のドアを開け、鞄を助手席に放り出しシートに座わって
エンジンをかける前にちょっと一息。

車の室内灯が消え、辺りの暗さにもなれた目が
ただ暗いだけに思えた空に光のが見えた。

とっくの昔に山の彼方に姿を消したはずの
愛想のない秋の夕陽が空にひいた光の条。
暗い空にサッと刷いた紅の色。

愛想が悪いんじゃない
目を向けさえすれば
夕陽の光は空に薄く紅を刷いて、そこにはあった。


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