かわうそ日記 ( 2009年03月 ) こよみのページ こよみのページ
春の別れ  (2009.3.29[日])

2 年と半年、我が家の玄関の一角で飼われていたイモリの、イモと別れることになりました。今年の年明けの頃から、時々我が家の深夜会議の議題として取り上げられてきた

 イモの進路

の結論として、イモを自然に帰すこと決めたからです。
イモは、次男が裏の堀から捕まえてきたイモリです。
この日記にもたまに登場してもらった、べっぴんさんです。
捕まえられた直後に卵を一つだけ産んだので、雌であることがわかっています。

我が家の玄関先の飼育ケースの中で、毎日赤虫を食べ、水苔の山の中に潜り込んで寝たり、石の上でポーズをとったりして暮らしていました。
無口なので、文句は言いませんが、仲間が一匹もいないのは寂しいでしょうし、べっぴんのイモが子供を生むことも出来ないのはかわいそうです。

「婿取り」も考えましたが、好みもあるでしょうから、やはり仲間が沢山暮らしている場所に放してやるのが一番だろうと話し合いが決まって、今日の放流となりました。

放流場所として考えたのは、毎年花見に出かけるダムの下。
ダムの下から分流された農業用の水路に沢山のイモリがいたことを思い出したからです。

行ってみると、散る桜の花びらの流れるその水路には今年も沢山のイモリがいました。
2 年半、狭い飼育ケースの中でぼんやり暮らしていたのでややメタボリック体型になったイモですが、べっぴんのイモのこと。これだけイモリがいれば婿はより取り見取り間違いなし。

飼育ケースから出されて、水路の水に放り込まれた(字義通り)イモは、一瞬にして変化した周囲の状況に戸惑い、イモリのくせに溺れているようにあたふた。

小匠ダムと桜偶然上流から流れてきた杉の小枝につかまって、ほっと安心の表情を浮かべて水路が暗渠となっているところへ流れて行きました。

暗渠の区間は 10m。
イモの最後の写真をと先回りして流れてくるイモを待ちかまえていました。が、出てきたのはイモがつかまっていた小枝のみ。
周囲が薄暗くなって安心したのか、暗渠の下で水に潜ったようです。

最後のイモの記念写真撮影には失敗しましたが、イモリのくせに溺れているかのようなひょうきんな姿を最後に記憶に残して、イモは自然に帰って行きました。

生き続けて、婿さんをつかまえ、そしてかわいい子孫を沢山残して欲しいです。花びらを浮かべたこの水路が、イモの一族でいっぱいになるくらいに。


いい気分  (2009.3.19[木])

休日出勤の振替で休みとなりました。
人様が働いている平日に、ぶらつくのはいい気分です。
今日ぶらついたのは二年ほど前に見つけた秘密の場所。
「秘密の」と思っているのは私だけでしょうけれど。

他の人から見れば秘密にしなければならないような場所ではないし、秘密にするほどの場所でもなさそうですが、それでも「秘密の場所」だと思うと、なんだか特別に思えます。
桃源郷、といったらちょっと大げさですか。

どこにでもありそうな住宅地の道をたどり、行き止まりまで歩くと、そこに段々畑が刻まれた急な傾斜地が現れます。
段々畑の段数は十段くらい。南側を向いた斜面に畑が刻まれています。
こぢんまりとして、箱庭に刻まれた畑の様。
探せば何処にでもありそうなその場所が私の桃源郷です。

桃咲いて陽当たりのよい畑をその縁を辿って一段一段と登って行くと、陽の光を浴びて背中が温もります。反面、日陰となる顔には冬の名残の冷たい風を感じます。

春の陽と冬の風。間もなく冬の風も春の陽に暖められて、春の風に替わる頃でしょう。
振り返ると、畑の間に植えられた桃の木の枝が、箱庭の段々畑にさしかけられていました。

 桃の花 咲いて天下の 春を知る

桃の花のさしかけられた眺めは紛れもなく春の景色。
冬の風が春風に変わるのを待つまでもなく、桃源郷は春の中。
人様が働いている平日に、春の桃源郷をぶらつくのは本当にいい気分です。


黄土色の空  (2009.3.16[月])

朝の空は雲一つ無い青空でした。
その同じ空が、昼になる頃にはすっかり白い空に変わっていました。
色が青から白へ変わっても、空には相変わらず雲は一つもありませんでした。
空の色を変えたのは、この地に生まれた雲ではなく、
大陸から海を渡ってきた細かな土でした。

海を渡ってきた土は、午後になって益々その厚みを増し、
暑くなった土の層を透かしてみる陽の光は、
いつしか土の色に変わっていました。

黄色い大河の水が幾千キロを運んで地に積もり、
大陸を黄色く染めた土が、
風に乗り、黄色い大河が超えられなかった海を越えて
空に黄土色の地層を生み出していました。
黄砂当来


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