かわうそ日記 ( 2009年12月 ) こよみのページ こよみのページ
小さな秋  (2009.12.19[土])

もうすぐ冬至。
暦の上では冬の至り。
すっかり冬のはずですが、今頃になって小さな秋を見つけました。

和歌山の南部、南紀と呼ばれるこの辺りは沿岸を流れる暖流のためか、冬でも比較的温暖な気候です。この温暖な地に暮らすようになって今年で19年目です。
ただし 9年のブランクが間に挟まっているので、本当の中身でいえば10年目となります。

この辺りの里山の木は、冬でも葉を落とさない照葉樹がほとんど。
当然秋に紅葉する木もほとんどありません。
10年の間、こんな里山を眺めていたので、秋の紅葉の話など、何処かよその国の出来事のように感じるようになってしまいました。

一月程前のことです。
久しぶりに生まれ故郷の福島に帰ることがありました。
そこで見たのは、すっかり木の葉の色の変わった里山の姿。
所々には松の緑が残っていることはあっても、山を覆った木々のほとんどは葉の色を変えていました。

 秋の紅葉って、こうだったんだ

すっかり忘れてしまっていた、あたりまえのことを再発見しました。
しかし和歌山に帰ってくると、やはり山は青々。
あれから一月が経って、季節は秋から冬となっているというのに、秋の紅葉も冬の落葉も知らぬげなこの辺りの山達です。

紅葉秋の紅葉というあたりまえのことに気が付いたら、この冬なお青々とした山達ではなんだか物足りない気がしていました。
そしたら、足下にありました。
小さな秋の紅葉が。

いつも散歩するたんぼ道。
その道に沿うようにして流れる水路の石垣に、紅葉した葉を見つけました。
葉をつけているのは全長30cmにも満たない、ミソハギ。
水路をのぞきこまないと見えないところに、隠れるように小さな紅葉がありました。
この辺りの紅葉は、無いのじゃなくて隠れているだけか。

 みぃーつけた

鬼ごっこのオニのように、声に出してしまいそう。
小さな秋の小さな紅葉を、
冬至間際のこの時期に見つけてしまいました。


ドッテンドリ  (2009.12.13[日])

いつも見ているつもりでいても、
 では、どんな姿?
とあらためて問われると案外思い出せないことって多いです。

ドッテンドリは、朝早くから屋根の上で
 ドッテン ドッテン
と音をたてながら歩き回ることから、我が家で勝手に名付けられた鳥です。

ドッテンドリは我が家ではどちらかというと嫌われ者。
私の家の周辺を縄張りとしている蛙やカマキリといった、なぜかかわいがられる小動物の捕食者だからです。
なじみとなったカマキリの姿が二三日見えないようなことがあれば

 ドッテンドリにとられたのかな?

イソヒヨドリと心配される。
ある意味私の家の生き物の敵役にされる鳥です。
家の屋根や、カーポートの屋根の上で

 ドッテン ドッテン

やっている姿をよく見るように思っていましたが、どんな姿かといわれると記憶はあやふや。あまりまじまじと眺めたことはありませんでした。
今日はたまたま、刈り取り済んだ稲株だらけの田圃に刺された竹の先端に止まったドッテンドリの姿を見つけてこの写真を撮しました。
こんな姿をしていたんですね、ドッテンドリは。

いつも見ていたようで、良く覚えていなかった我が家の敵役、ドッテンドリは、意外にも格好いい敵役でした。
ちなみに、ドッテンドリの本当の名前はイソヒヨドリ。
ヒタキ科の鳥でした。


山茶花の冬  (2009.12.12[土])

なぜこんなところに絨毯が?
赤い絨毯に見えたものは山茶花の花びらでした。

 さざんか さざんか 咲いた道

そんな山茶花の咲く道に気がつかないうちに、山茶花の花が散る季節となっていたのです。

近頃は午後 4時過ぎたらもう夕暮れです。
早いななんて思っていたらそれもそのはず、カレンダーの日付はもう十二月も半ばです。
でもなんだかしっくりと来ません。何か変な感じです。

もう十二月?
そう感じるのは東北で生まれ育った私の身体が、十二月はもっと寒かったはずと思っているからかもしれません。

山茶花散る私が身体の記憶に騙されて、まだ冬には早いと思っているうちに、この辺りにはこの辺りなりの冬がちゃんとやって来ていました。

 さざんか
 さざんか
 咲いた道


山茶花の咲いた道に私が気づかなくとも、山茶花は咲き、そして散っていました。


横時雨のあと  (2009.12.5[土])

一時間前には、車から降りるタイミングを計らないといけないほどの雨が降っていました。
週末に食料品や日用雑貨をまとめ買いするショッピングセンターの駐車場でのことです。
冬の雨といえば、時雨。
時雨といえばはらはらと雨脚も軽く降るものと思い込んでいましたが、今日の雨にはそんな勝手なイメージを打ち砕く勢いでした。

小一時間ほどで買いを終え、荷物を抱えて外に出ると店に入ったときのあの雨が嘘のように上がっていて、さっきまでの横時雨で洗濯された透明な空気は冬の陽光で満たされていました。

雨上がり荷物を車に積み込むと、子供達と家内とは週末の買い物後の楽しみとしているゲームセンターに向かい、ゲームに興味のない私は広い駐車場の柵の先の林に向かいました。

私にはゲームより、落ち葉の上に伸びる木の影や木の影の間に見えるツルソバの花に残った雫を眺める方がよほど楽しく思えますが、子供達もいつかはそんな風に好みを変えるのでしょうか。

雨で湿った落ち葉の上を歩いていると、空から降ることを止めたはずの雨粒が時折落ちてきて音をたてます。
風に吹かれた木々の葉から、落ちてきた雨粒です。

地面までの旅の途中、木の葉の上で休憩をしていた雨の粒が、遅ればせで落ちる音でした。


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