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 【葦を啣む雁】 (あしをふくむかり)

 渡り鳥の雁は、遠く海を渡る前に海上で翼を休めるための葦を用意し、これ
 をくわえて渡りの旅に出たという伝説から、準備が整い手抜かりがないこと
 の例え。出典は淮南子(えなんじ)。

 これに対応するかのような「雁風呂(がんぶろ)」伝説が、日本の津軽地方
 があります。
 秋に海を渡り終え、津軽の浜にたどり着いた雁は、浜にくわえてきた葦や小
 枝を落としてさらに南へと旅して行きます。春になり今度は北へ向かって海
 を越える際には津軽の浜で秋に落とした小枝を拾って飛び立って行きます。

 雁の北帰行が終わる頃になると、浜には秋から春の間に命を落としてしまっ
 た雁の数だけの小枝が残されます。津軽の人々はこの小枝を拾い集めて風呂
 をたて、旅の途中で命を失った雁を供養したと言います。この供養の風呂が
 雁風呂です。

 こう書いて行くと【葦を啣む雁】と【雁風呂】が見事に一致するのですが、
 実際はどうかというと、雁が葦の葉をくわえて渡りをすることはないそうで
 す。また、雁風呂伝説自体が津軽地方には無いそうです。どうやら都人が津
 軽の浜の冬場の漂着物と淮南子の故事を結びつけて生み出した物語だろうと
 思われます。

 暦でこの話に関連する言葉を探すと七十二候に
  「雁来る」  (寒露の初候 10/9 頃)
  「雁水へ帰る」(清明の初候 4/10 頃)
 が見つかります。

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