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 【貧者の一灯】 (ひんじゃの いっとう)
 貧しい者が苦しい生活から出費して神仏に供える、真心のこもった一つの灯
 明。たとえわずかでも、心のこもった行為こそ尊いということのたとえ。
 「長者の万灯より貧者の一灯」

 本日、ぱらぱらと成語辞典をめくっていて行き当たった言葉です。
 今更解説するまでもなくよく知られた言葉です。

 有り余るほどの財産をもつ長者が納めた万の数の灯が強風によって吹き消さ
 れた後も、貧しい者が苦しい生活の中からやっと納めた一本の灯明だけが消
 えずに残ったといった話をきき、行いの尊さとは物理的な量で計られるもの
 ではなく、どれだけ真心を込めたによって計られると教えられました。

 どうも、私たちの中には「貧者=善人」「富者=悪人」といった構図がある
 ように思います。長寿番組、水戸黄門でも悪人はお金持ちの越後屋で、善人
 は裏長屋に住む貧しい職人の親子といったパターンがほとんど。
 そのためか富者の行為はより低く見られ、貧者の行為はより高く見られる気
 がします。

 込められた真心の量は灯の数でははかれないというのであれば、それは貧者
 の一灯にも長者の万灯についても同じはずです。長者とはいえ、万の灯火を
 納めるのは大変なことかもしれません。
 それに、暗い夜を照らす明かりとしての効力としては長者の万灯は貧者の一
 灯より遙かに優れており、人々の役にたつはずです。

 貧者の一灯の精神と、長者の万灯の効力。
 どちらか一方だけで良いわけではないのです。

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