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 【迂遠】 (うえん)
 1.道がまがりくねって遠いこと。また、まわり遠いこと。
 2.直接の役に立たないこと。実際的でないこと。
   ・・・ 《広辞苑》より

 迂遠はまた迂闊(うかつ)という場合もあります。迂遠にしろ迂闊にしろど
 ちらもあまりいい意味で使われることはないようです。
 何事も、素早く効果的にというわけです。

 確かに「回り道」は望ましいことではないでしょう。
 けれど「回り道に見える」ことは必ずしも悪いわけではありません。
 西郷南洲翁遺訓に次のような言葉があります。

 「事大小と無く正道を踏み至誠を推し一時の詐謀を用うべからず。
  ・・・(略)・・・正道を以て之れを行えば目前には迂遠なる様なれど
  も先に行けば成功は早きもの也」

 南洲とは、西郷隆盛の号。
 この西郷南洲翁遺訓はある意味不思議な本です。なぜなら、この本をまとめ
 たのが戊辰の役で、薩摩軍を本体とした官軍と戦って敗れ、ついには降伏し
 た荘内藩の人たちが、西郷死後(明治22年に西郷の名誉回復されたのを祝っ
 て)に編纂した本だということです。

 荘内の人たちは戊辰の役で戦った、敵の総大将にあたる西郷の語録を編纂し
 これを全国に広める努力をしたのですから不思議です。

 この不思議な現象が起こったのは、降伏した荘内藩に対して西郷が「正道を
 以て」これを遇したことに荘内藩の人士が深く感謝し、またそうした西郷と
 いう人の徳を敬慕したためといわれます。

 「正道を以て之れを行えば目前には迂遠なる様なれども成功は早きもの也」
 迂遠という言葉を聴くと、この南洲翁遺訓をを思い出して、迂遠に見える道
 について考えます。そのためでしょうか、「迂遠」という言葉が私には悪い
 言葉には思えなくなっています。


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