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【邯鄲の夢】(かんたんのゆめ)
 官吏登用試験に落第した盧生という青年が、趙の邯鄲で、道士呂翁から栄華
 が意のままになるという不思議な枕を借りて寝たところ、次第に立身して富
 貴を極めたが、目覚めると、枕頭の黄粱(こうりょう=粟)がまだ煮えない
 ほど短い間の夢であったという故事。出典は『枕中記』。
 人生の栄枯盛衰のはかないことのたとえ。
 邯鄲の夢。黄粱一炊の夢。盧生の夢。 《広辞苑》

 盧生(ろせい)は夢の枕を使って、夢の人生を歩みました。
 夢の人生で盧生は名家の娘と結婚し、科挙にも合格して官吏に登用され、異
 民族を征伐し、とんとん拍子に出世して行きます。

 一時は宰相に疎まれて左遷されるようなこともありますが、ついには自らが
 宰相にまでなります。その後謀反の濡れ衣を着せられ、世を儚んで自殺しよ
 うとして妻に止められこれを思いとどまり、やがて濡れ衣が晴れて再び高位
 に上り、晩年は大勢の子や孫に囲まれた幸福の内に過ごすという、波瀾万丈
 ながらハッピーエンドに終わる生涯をおくりました。


 最近は「暦のこぼれ話」に採り上げる話題が多かったので、その割を食って
 コトノハはお休みということがつづきました。そんなことがあったので、今
 日は最初からコトノハを書こうと思っていました。
 普段は、書きたい言葉があって書き始めるので、そういう点ではコトノハは
 書きやすいものなのですが、今日は、

  コトノハを書こう。さて何を書こうか?

 といつもと違った展開になって悩んでしまいました。
 キーボードの前で悩んでいる内についウトウトしてしまい、その「ウトウト」
 の中で夢を見ました。夢の中ではメルマガをさっさと書き終えて楽しい休日
 を過ごし、気が付けばもう夕方。どこからか好きな歌が聞こえてきて、あれ
 この曲は? と思っているところで、目が覚めました。

 目が覚めると、キーボードの前で腕組みしたまま。目の前にはコトノハが書
 けずにとまっているメールマガジンの原稿がありました。
 傍らでは、原稿を書きながら聞いていたCDプレイヤーから、夢の中で聞いて
 いたあの曲が流れていました。
 ウトウトしていたのはほんの一瞬のことだったようです。

 私の場合は、一生ではなくてほんの一日の夢でしたが、夢から覚めた瞬間に
 思い浮かんだのが、邯鄲の夢みたいだと言うこと。
 夢のお陰で、コトノハを書き上げることが出来ました。


 邯鄲の夢の故事では、夢を見た盧生は
 
  栄辱も富貴も死さえも何もかも経験しました。先生はすっかり私の欲
  を塞いでくださった。

 と呂翁に礼を述べて邯鄲を去って行きます。
 盧生は夢をみたお陰で欲を去ることが出来たと言うことですが、実際はさて
 どうでしょうか?
 我々は夢の中とは知らずに、夢の中の一生をそれこそ「夢中」で生きている
 のかもしれません。

 夢の中の一生を終えて目が覚めたときに、さて一体何を思うのでしょうか?


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