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【青蘆】(あおあし)
 夏の水辺に青々と茂っている蘆。夏の季語。《広辞苑》

 蘆は日本各地の水辺に群生するイネ科の多年草。
 春に芽を出し、六〜七月になると薄に似た細長い葉を青々と茂らせる。
 薄よりたくましく、高さは二〜三メートルにも及ぶ。
 この青々と茂った緑の蘆を「青蘆」という。青葦とも書く。《花の歳時記》


 子供の頃、家のすぐ近くを阿武隈川が流れていました。
 川岸には、川が運んできた黒土が堆積していてそこに楊(やなぎ)の木と蘆
 が沢山生えていました。

 川岸一帯の楊や蘆は誰の所有物でもない(少なくとも田舎では、だれも問題
 にしていなかった)ので、伐ろうが抜こうが子供のし放題。
 そういうわけで、この楊と蘆の茂みで、楊や蘆を伐ったり抜いたりしてよく
 遊んでいました。

 「蘆(あし)」は、「悪し」に通じると言うことで、不吉な感じがするとい
 うことで、「葭(よし)」と言い換える場所もあります。私の生まれ故郷で
 は、この「葭」の呼び名で呼んでいましたから、私にとっては葭の方がなじ
 みのある名前で、「蘆」という呼び名はなんだかよそ行きの、あらたまった
 言葉のような気がします。


 今の時分だと蘆の背は高くて、蘆の茂みに踏み込むと子供の頃の私などすっ
 ぽりと蘆の中に埋没してしまいます。
 四方皆、蘆の葉に閉ざされた中で、頭の上だけに開けた視界の先に、夏の狭
 い空が見えていました。

 青葦の茂みの中で、狭い青空を見上げ、蘆の葉の葉擦れの音を聞きながら、
 繰り返される季節が自分には無限に残されているわけではなくて、何十回と
 こうして夏空を見上げるうちに、いつか蘆の茂みの中に自分がいなくなって
 しまう日が来るんだなと、子供ながらに感じました。

 現在、朝夕の通勤の途中に沢山の蘆が生えている場所があります。
 そこを通って生い茂る蘆の茂みを眺めると、蘆に囲まれて空を見上げた時か
 ら何十回目の青蘆の季節かなと考えてしまいます。
 そしてあと何回、青蘆の季節を過ごせるのかな、と。

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