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【野分】(のわき・のわけ)
 1.(野の草をわけて吹く意) 二百十日・二百二十日前後に吹く暴風。台風。
  また、秋から初冬にかけて吹く強い風。秋の季語。
 2.源氏物語の巻名。
  《広辞苑・第五版》

 二百十日、二百二十日頃に吹く暴風と言うと、今年は9/1〜9/11頃のことと
 なりますね。

 「野分」は野の草を分けて吹きすさぶ風ということから名付けられたもので
 台風を含む秋の頃の強風の一般的な呼び名でした。
 現在は雨を伴わない強風に限って呼ぶことが増えているようです。
 「野分の風」とも呼ばれます。また野分の風が吹くことを「野分立つ」と言
 います。

 野分は稲の開花〜刈り取りの時期に吹く暴風ですから農作物の収穫に大きく
 影響を与える風として畏れられました。越中八尾の「風の盆」などは、この
 恐ろしい暴風の被害を避けようと、風神を踊りに合わせて送り出そうという
 祭りです。

 風の姿は普段は見えないものですが、野分は収穫直前の田圃を渡る様子が稲
 の動きでありありと見えます。
 子供の頃から、この田圃の上を渡る風が様々な形の稲穂の波を作りながら吹
 きすぎる様を眺めるのが好きで、濡れるのも忘れてこれに見入ったものでし
 た。

 野分の吹いた日の翌日は、小学校への通学路の左右の田圃の稲が、想像も出
 来ないような形で、向きで吹き倒されているのを目にしました。

 風で倒された稲が広がる風景は、農家の方にとっては一年の苦労が無になっ
 てしまいかねない悲しい光景なのでしょうけれど、そうしたことに思いを致
 せなかった、幼い頃の私には、ただただ風の造形の不思議さを感じさせる光
 景でした。

 昨日は台風 9号の影響で風雨がはげしい一日でした。
 この辺りの田圃はもう既に刈り取りを終えていましたので、稲穂の上を走る
 風の姿を見ることはありませんでしたが、所々に見える休耕田の草の上には、
 走りすぎる風神の足跡をはっきりと認めることが出来ました。

 
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