日刊☆こよみのページ スクラップブック
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【邯鄲】(かんたん)
1.(Handan) 中国河北省南部の都市。春秋時代、衛の都。
戦国時代、趙の都。交通の要地で、商業が栄えた。
鉄鋼・石炭など各種工業が盛ん。人口121万4千(1995)。
2.能の一。「邯鄲の枕」の説話を脚色する。
3.地歌・長唄・河東・一中・箏曲・常磐津などの曲名。2に取材。
4.〔動〕バッタ目カンタン科の昆虫。体は細長く、スズムシに似て長さ約
12ミリメートル。淡黄緑色。前翅は半透明、後翅はたたんで尾状に前翅
外に突出。触角は糸状で体長の約 3倍。
夏秋の頃、草の間にすみ、「りゅうりゅう」と美音で鳴く。秋の季語。
《広辞苑》
1のに登場する邯鄲については、これにまつわる『邯鄲の夢』が一度コトノ
ハに登場しています(2007/07/08号)。
(邯鄲の夢については、 http://koyomi8.com/doc/mlko/200707080.htm を
お読みください。)
本日の「邯鄲」は昆虫の邯鄲。上の説明では4にあたります。広辞苑ではそ
の鳴き声は「りゅうりゅう」とありますが、私の耳には「ルールールー」と
聞こえます。邯鄲はコオロギノ仲間で、色は薄緑色。この色ですから草の間
に隠れられるとなかなか見つかりません(見つからないようにうす薄緑色に
なったのでしょうが)。
邯鄲を聞くそばがらの枕かな (川崎 展宏)
秋の季語ということで、引いてみるとこんな句が出てきました。寝返りを打
つと微かに音を立てるそばがらの枕で聞き入る邯鄲の声は、戸外から聞こえ
てくるものなのか、それとも虫かごから聞こえてくるものなのか。
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の『日本の面影』には「虫の楽師」とい
う随筆が収録されています。「虫売り」という商売に興味を持ったハーンが
その起こりや、ハーンの生きた時代の虫の値段などを詳しく書いていてなか
なか面白い随筆です。
この虫の楽師に書かれた邯鄲の値段は十銭から十二銭。一番安い虫は鈴虫で
三銭五厘ですから、邯鄲は結構高めの虫だったようです。
ちなみにこの随筆の書かれた明治30年頃、浅草のコーヒー(「珈琲」と書く
べきか?)の値段が一杯二銭だったそうですから、邯鄲はそんなに安い値段
の虫では無かったようです。
秋も深まりましたので、野の邯鄲の数も少なくなってきたのか、その
ルールールー
という低い鳴き声がますます低く聞こえます。
それにしてもこの虫になぜ「邯鄲」の名前が付いたのでしょうか?
この虫の鳴き声が、邯鄲の夢の盧生のように人生のはかなさを思わせるもの
だからでしょうか?
ルールールー
窓の外から微かに邯鄲の鳴く声が聞こえています。
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