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【果物】(くだもの)
 (「木(く)の物」の意)
 1.草木の果実で食用となるもの。水菓子。生(なり)果物。
 2.(女房詞)柑子(こうじ)。
 3.菓子。唐菓物(からくだもの)。
 4.酒の肴の総称。        《広辞苑より抜粋》

 「く」は木、「だ」は「けだもの」の「だ」と同じく「の」の意。
 木や草になる食用の果実。水菓子。  《日本語源大辞典》

 秋になると様々な果物が店頭に並ぶようになります。また、木の物と言うと
 おり、木になった柿や梨、蜜柑の実を目にすることも多くなります。
 私の住む和歌山県は蜜柑の産地、畑でも店頭でも沢山の蜜柑を目にするよう
 になりました。

 現在は蜜柑の産地に暮らしている私ですが、生まれ育ちは東北地方でしたの
 で子供の頃に温暖な場所を好む蜜柑が木になっている姿を目にすることはあ
 りませんでした。ですから、和歌山に住むようになった当初は、日当たりの
 良い丘の斜面一杯の蜜柑畑の眺めは不思議でしかたありませんでした。

 子供の頃の秋の果物というといちばん印象に残っているのは柿。
 ほんのりと柿が黄色く色づいてくる頃になると、秋の訪れを感じたものです。
 もちろん、しみじみと季節の変化を味わうというよりは、柿の実の味を思い
 浮かべたということですが。
 たびたびこのメルマガにも登場する江戸時代の書物、守貞漫稿の菓子の項を
 見ると、

  「古は桃柿梨栗柑子橘の類の凡て菓実を菓子と云事勿論也。
   今世は右の菓実の類を京坂にて和訓を以てくたものと云、
   江戸にては水くわしと云也」

 とあります。昔は果物が「菓子」だったんですね。
 「くだもの」という言葉は、この説明では菓実の京都・大阪地方での呼び名
 として登場します。江戸では水菓子といっていたのもわかります。
 そう言えば和菓子の甘みの基準は柿の甘みだとか。果物が菓子だったことを
 思い起こさせる話です。

 様々な味の氾濫する時代ですが、菓子の原点である木の実り、果物の味を味
 わいながら、それをもたらしてくれる秋という季節も味わってみませんか。


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