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【蜃気楼】(しんきろう)
 [史記天官書「海傍蜃気象楼台」](「蜃」は大蛤。古くは、大蛤が吐く気
 によって空中に楼台などが現れると考えた)地表近くの気温が場所によって
 異なる時、空気の密度の違いによって光線が屈折するため、地上の物体が空
 中に浮んで見えたり、あるいは地面に反射するように見えたり、遠方の物体
 が近くに見えたりする現象。

 砂漠・海上、その他空気が局部的に、また層をなして、温度差をもつ時など
 に現れやすい。富山湾で春に見られるのが有名。
 蜃楼。貝楼。空中楼閣。海市(かいし)。春の季語。
  《広辞苑》

 広辞苑の説明例として取り上げられたのは有名な富山湾の春の蜃気楼でした
 が、私の住む和歌山でも蜃気楼が見える時期があります。それは専ら冬。
 富山湾の蜃気楼は、暖かくなりつつ有る富山湾の春の空気の下に、北アルプ
 スの雪解けの冷たい水が流れ込んで、海面に接した空気に大きな温度勾配を
 作り出してしまうことによって生まれます。

 和歌山で見られる蜃気楼はこれとは逆で、冬の冷たい空気が流れ込んできて
 も沖合の海には暖流の黒潮が流れているため、やはり海面と接する部分で空
 気に大きな温度勾配が発生して、その結果として蜃気楼が生じています。

 生まれる時期とメカニズムには違いが有りますがどちらも海に現れる現象で
 すから、史記に書かれた伝説のとおり大蛤(おおはまぐり)が吐く息によっ
 て生まれたのかもしれません。

 海に蜃気楼が見え始めると富山には春が訪れ、海の蜃気楼が見えなくなる頃
 に和歌山には春が訪れます。
 日本を挟んだ北の海と南の海での、それぞれの蜃気楼とそれぞれの春の話で
 した。

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