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【陽炎】(かげろう)
 春のうららかな日に、野原などにちらちらと立ちのぼる気。
 日射のために熱くなった空気で光が不規則に屈折されて起るもの。
 いとゆう。はかないもの、ほのかなもの、あるかなきかに見えるもの、など
 を形容するのにも用いる。その際「蜉蝣(かげろう)」を意味することもあ
 る。春の季語。
  《広辞苑第五版》

 陽炎は別に春だけの専売特許というわけではありません。
 夏の暑い日なんかには、たっぷり見る事の出来る現象ですから。

 陽炎は季節に関わりなく暖かな日に起こる大気現象ですが、ではなぜ春の言
 葉とされているのかなと考えると、「暖かくなったなと感じさせるもの」な
 のでこの暖かさがを一番喜べる春、冬の次の季節がこの言葉に相応しいと感
 じたからではないでしょうか。

 広辞苑の説明に「いとゆう」という言葉が登場しますが、この言葉には「糸
 遊」という文字があてられます。そして、糸遊と書いて「かげろう」と読む
 事もあります。

 これは、小型の蜘蛛が草の上などで風を待ち、風が吹くと糸を跳ばしてこの
 風に乗り、移動する様子を指すものです。この蜘蛛の糸とばしは晩秋と早春
 に多く見られる現象だそうで、雪国では雪迎え・雪送りと呼ぶ事があるそう
 です。

 風にのった蜘蛛の姿自体は小さくて目立たず、糸だけが陽にきらめきながら
 ゆらゆらと揺らめいて見えることから、ゆらゆらと揺れて見える陽炎と同じ
 現象だと昔の人が思ったからこんな言葉を生み出したのでしょうか。そんな
 ことを考えてみると楽しいですね。
 ちなみに、中国の言葉にも似たようなものがあって、こちらは「遊糸」と書
 くとか。海のこっち側も向こう側も、見るもの、感じるものには共通点があ
 るのですね。

 揺れるものは空気か蜘蛛の糸か、定かに見極める事は出来なくても、ゆらゆ
 らと揺れる光に、暖かさを実感する季節となったようです。

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