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【羊歯萌ゆる】(しだ もゆる)
 晩春の季語。

 【羊歯・歯朶】(しだ)
  1.シダ植物の総称。特に、その無性世代(胞子体)。
  2.シダ植物のうち最も進化し、大形の葉をつける類の総称。種類が多く、
   世界に約 1万種ある。茎は多く地中にあり、そこから葉と根を生ずる。
   葉は単葉または4〜5回羽状複葉。羊歯類。
  →羊歯植物。
  3.特に、ウラジロをいう。新年の季語
    《広辞苑・第五版》

 新しく造成された土地の粘土の表土を持ち上げて、蕨が芽を出しています。
 今頃芽を出す蕨はだいぶ寝坊助の蕨で、早起きのあるいはごく普通の蕨たち
 はもうすっかり大きくなって立派な羊歯になっています。

 シダ類は海から陸に進出した植物界のパイオニア。子供図鑑に描かれた恐竜
 の絵は、必ず巨大なシダ類の林をのし歩く姿です。
 太古に陸上進出の先兵として活躍した羊歯たちは、いまも先祖の伝統を守っ
 て、「新しく造成された土地」への植物一番乗りを目指しているようです。

 羊歯は歯朶とも書きますが、この「朶」を辞書で引くと木の枝を表す言葉だ
 と出ています。木の枝に相当する二股に分かれた葉軸にそれぞれ歯のように
 並んだ葉を付ける事から歯朶・羊歯が植物を表す文字となったようです。
 羊歯自体は新年の季語ですが、

  【羊歯萌ゆる】

 とすると晩春の季語となります。
 造成されたばかりでまだ他の植物が根付いていない新しい土地に、開拓者と
 して乗り込み、堅い粘土質の表土を突き破って伸び、葉をひろげて緑に萌え
 る羊歯の茂み。
 今日は、恐竜のように羊歯萌ゆる茂みを歩き回ってみましょうか。
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