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【石に漱ぎ流れに枕す】(いしにすすぎ ながれにまくらす)
 負け惜しみが強く、屁理屈をつけて、自分の間違いを正当化するたとえ。
 晋の孫楚が「石に枕し流れに漱ぐ」と言うべきところをうっかり「石に漱ぎ
 流れに枕す」と言ってしまい、「石に漱ぐのは歯を磨いて丈夫にするため、
 流れに枕するのは俗事を聞いた耳を洗うため」と言ってこじつけたという故
 事による。
  《旺文社・故事ことわざ辞典》

 「石に枕して眠り水の流れに口を漱ぐ」といえば自然に身をまかせて悠々と
 して生きる生き方。孫楚もこういう悠々とした生き方をしたいものだと、山
 林への隠遁生活への憧れを友人の王済に語ったところでこの言い間違いをし
 たのでした。

 王済はすかさず、「君が言うように石で口を漱ぎ、流れに枕することなど出
 来るものではない」と言って冷やかします。言い間違った孫楚は今で言えば
 いいところのボンボン。そんなボンボンがちょっと流行に乗ってこんなこと
 を言い出したところで実行出来るはずがないという思いもあったのだと思い
 ます。

 ところが孫楚は「いやいや石で漱ぐのは歯を磨くため、流れに枕するのは耳
 を漱ぐため」と強弁したことで、そのとき言った

  漱石枕流(そうせきちんりゅう)

 が負け惜しみの強いことを表す熟語となったのでした。
 夏目漱石の「漱石」がこの故事からつけられた筆名であるというのはよく知
 られた話です。
 また、「流石(さすが)」ということばもこの故事から生まれたことば。
 いまなら、「流石」は賛辞のことばとして使われますが、この故事から生ま
 れたと考えると、元々は「流石に言い逃れが上手いね」といったちょっと皮
 肉な使われ方をしたものだと思われます。

  流石、○○君!

 なんて言われたら、素直に喜ぶべきか否か、微妙な問題を含みそうです。

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