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【虚仮】(こけ)
 1.[仏]内心と外相とがちがうこと。真実でないこと。
  歎異抄「ひとへに賢善精進の相をほかにしめして、うちには虚仮をいだけ
  るものか」
 2.思慮の浅薄なこと。おろかなこと。また、そういう人。
  洒、辰巳婦言「是もやつぱりおれが虚仮から発(おこつ)たことだ」
 3.(名詞などの上に付けて)むやみにするの意を添え、また、けなして言う
  のに用いる。「虚仮おしみ」「虚仮おどし」
 用例:虚仮にする、虚仮の後思案、虚仮の行、虚仮も一心
   《広辞苑・第五版》

 「虚仮にされた」と言えば、愚弄されたという意味ですが、最近はこの虚仮
 に変わって「馬鹿」という言葉が使われるようになってきたようです。

 虚仮の意味に 2として書かれている「思慮の浅いこと、おろかなこと」の意
 味で使われるものには、この虚仮を馬鹿に置き換えても大体意味が通じる訳
 です。広辞苑の説明の最後につけた用例も虚仮に替えて馬鹿と書いても大体
 は意味が通じます。
 「馬鹿」はよく使われる言葉ですから、それに取って代わられて虚仮の生息
 範囲は大分狭くなってしまったようです。

 とはいいながら外装が内実を示さないという意味での「虚仮」はまだ生きて
 いるようで、「虚仮おどし」といわれれば根拠のないもの、内実のないもの
 という意味で使われますから、「馬鹿」では置き換えられない言葉として、
 こちらの意味では今後も生き残っていきそうです。
 「虚仮」の意味としてはこちらが本義でしょうか。

 さてこの本来の意味での「虚仮」で何を思い出す言葉といえば、

  世間虚仮 唯仏是真 (世間は虚仮にして、唯だ仏のみこれ真なり)

 ですね。有名な聖徳太子の言葉です。
 目の前に見えるものの姿は只仮の姿で、その真実を映すものではない。
 世間での評価も、地位も只仮の評価であり地位であるに過ぎない。

 生活して行く上では仮のものであっても評価し、比較しなければならないの
 は事実ですが、それが絶対のものだと思い込んでしまうと道を誤ることにな
 りそうです。

  世間虚仮

 虚仮の世間に生きてはいても、自分が虚仮の世間に生きていることに気が付
 くことで、その外側から虚仮の世間の内に真実が見えてくるのではないでし
 ょうか。うかうかと生きていると一生「虚仮にされて」終わってしまうかも。
 そう考えると、恐い恐い。

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