こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
【星月夜】(ほしづきよ)
 1.暗夜に、星の光が月のように明るく見える夜。
  星夜。ほしづくよ。秋の季語。
  永久百首「我ひとり鎌倉山を越え行けば星月夜こそうれしかりけれ」
 2.(謡曲の詞章などで)「かまくら(鎌倉)」を導く修飾語として用いる。
  謡曲、調伏曽我「明くるを待つや星月夜鎌倉山を朝立ちて」
   《広辞苑・第七版》

 昨日、1時間ほど夜の散歩をしてきました。
 間もなく日付が変わる頃のでしたので夜の散歩というより、深夜の散歩と言
 った方が正確でしょうか。

 大きな街なら、こんな時刻でも街の灯りで空が明るいものですが、私の住ん
 でいる地方都市では、まばらに並んだ街灯と街灯の間から見上げると、漆黒
 の空に沢山の星が並ぶのがよく見えました。

 秋、空気が澄んで空の高さが何割か増したようです。
 高さを増した空に見える星の数は、空の高さが増した分だけ数を増している
 ようでした。

 月の出ない秋の夜空は星月夜。
 数を増した星が月の明かりのように明るく輝く夜の呼び名です。

◇星月夜の井
【星月夜の井戸】(ほしづきよの いど)
 鎌倉坂ノ下にある井戸。
 この井戸には昼も星影が見えたと伝える。
 星月の井。星の井。
   《広辞苑・第七版》

 神奈川県鎌倉市坂ノ下には、「星の井通り」という通りがあります。
 星の井通りの名は、その通りに面した虚空蔵堂の端に残る「星の井」という
 名の井戸から生まれました。

 「星の井」はまた「星月夜の井」とも呼ばれています。
 その昔、この井戸をのぞき込むと昼でも星影が見えたためこの名が付いたと
 言われます。星月夜が鎌倉にかかる枕詞となったのはこの井戸が鎌倉にあっ
 たためとか。

 ところが今は、「星月夜の井」の中に星影を見ることは出来ないそうです。
 ある人が誤って井戸に包丁を落としてしまって以来、星影は消えてしまった
 のだとか。星影を見せてくれていた何かが、金気や刃物を嫌ってこの井戸を
 去ってしまったのでしょうか。

 昨夜は月の無い秋の夜。
 時折車道を走る車がある以外は、人影を見ることもなく、草陰に鳴く虫の音
 を聴きながら星月夜を見上げげた昨夜の深夜の散歩でした。

 夏の星座の多くは西の空に移動し、星空も夏から秋へと季節を変えていまし
 た。近頃はゆっくり星空を眺めることを忘れていましたけれど、時々は深夜
 の散歩で星月夜を楽しみたいです。

 星が輝く秋の夜があっても、誰一人これを見上げる人がいなくなってしまっ
 たなら、包丁を落とさなくとも「星月夜」という素敵な言葉も、消えて行っ
 てしまいそうですから。
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