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【貝寄せの風】(かいよせの かぜ)
 (貝を浜辺に吹き寄せる風の意) 陰暦の2月20日頃に吹く西風。かいよせ。
 「貝寄する風の手品や和歌の浦」(芭蕉)
   《広辞苑・第五版》

 広辞苑の説明にもあるように、貝寄せの風は陰暦の 2月20頃に吹く西風です。
 貝殻を吹き寄せるほどの風ですから、かなり強い西風だと云うことが出来る
 でしょう。

 この強い西風が吹く時期について歳時記、季語辞典には「陽暦では 4月末頃」
 と書くものがあります。これは陰暦 2月20日を陽暦に直した日付のはずなの
 ですが、陰暦 2月20日は陽暦では 3月上旬〜 4月上旬頃のはずなので、陽暦
  4月末とするのは少々遅すぎる気がします。

 なぜなのかと考えると、どうやらこの歳時記の解釈には、四天王寺の精霊会
 (聖霊会)の日取りが関係しているようです

 現在、 4月22日には四天王寺において「聖霊会舞楽大法要(しょうりょうえ
 ぶがくだいほうよう)」が行われています。これは四天王寺の開祖である聖
 徳太子の命日(陰暦 2月22日)にその霊を鎮めるために行われる行事で、四
 天王寺ではこれを陽暦 4月22日に行っているのです。

 この日、四天王寺では重要無形民俗文化財に指定されている四天王寺舞楽が
 舞われます。この舞台の四隅には供養のための造花が飾られますが、この造
 花を作るために元は貝殻を使っていたそうです。
 貝寄せの風はこの精霊会の飾りに使うための貝殻を太子に捧げるために、竜
 神が吹かせる風だと言い伝えられていました。

 陰暦 2月22日に行われていた精霊会に間に合わせるためには、少し前には貝
 殻を集めなければならないわけですから、貝寄せの風は精霊会の少し前、陰
 暦の 2月20日頃に吹く風とされていました。

 既に書いたとおり、この陰暦 2月22日に行われていた精霊会ですが、この日
 取り現在私たちが使用しているカレンダーの日付にあわせるときに、法隆寺
 などは月遅れの 3月22日を、四天王寺等は 4月22日を採用しました。

 貝寄せの風が精霊会に用いる貝殻を竜神が贈り届けるために吹かせる風だと
 すれば、精霊会が 4月22日に行われるのなら、陰暦 2月20日頃には少々遅い
 時期ではあっても、 4月20日頃に吹かせなければいけないという訳なのでし
 ょう。

 これを書いているのは 4月20日(2010年)。
 きっと今頃は、海の底でカレンダーに印された赤丸に気が付いた竜神様が、
 西風を吹かせる準備をしていることでしょうね。

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