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【霧笛】(むてき)
 霧中信号の一。
 霧が深い時に、船舶や灯台・灯船がその位置を知らせるために鳴らす(汽)
 笛。きりぶえ。
   《広辞苑・第五版》

  ボー・・・、 ボー・・・

 海辺に生活していると霧の中からこんな音が聞こえてくることがあります。
 これが霧笛。

  船、港、霧、霧笛

 とくれば一昔前の演歌なら一曲か二曲分の歌詞が出来上がってしまいそうな
 言葉の組み合わせ。そのため霧や霧笛という言葉にロマンチックな連想をな
 さる方もいるかも知れません。
 しかし実際に船を操る人からすれば霧は迷惑千万なものです。

 先日のことでした、朝起きると深い霧が辺りを覆っていました。
 霧粒の流れを追って行くと海の方から流れてきていました。海霧です。
 その海霧の粒子とともに「ボー、ボー」という霧笛の音も流れてきました。

 海霧は、冷たい海水の上に湿った暖かい空気が流れ込んだ場合によく発生す
 る霧で、海の上、あるいは海辺では春から初夏の頃によく発生します。発生
 するとなかなか晴れない海上を行き交う船にとっては迷惑な霧です。

 霧笛は、霧によって視界が閉ざされた船に船同士や、灯台などがその位置を
 知らせるために発する音です(注1)。

 現在は GPSやレーダーが発達して、そうしたものがなかった時代に比べれば
 霧の中での航海も安全にはなったでしょうが、最後の安全確認はやはり人間
 の五感でするもの。そうである限り霧の日にはこの霧笛の音が海から聞こえ
 続けることでしょう。

 昼を過ぎても深い霧に閉ざされた海からは、「ボー、ボー」と霧笛の音が断
 続的に聞こえていました。

  「私はここ、ここにいるよ」

 霧笛の単調な音にのせて、霧の中から船が呼びかけているようでした。

 ※注1
 海上保安庁が管理する灯台等設置されていた霧笛はに2010年 3月31日をもっ
 て全て廃止されました。陸上施設としての霧笛は現在は民間設置のものが若
 干残るだけです。

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