日刊☆こよみのページ スクラップブック
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【いなさ】
(中国・四国以東で)南東から吹く風。
特に、台風の時期の強風。たつみかぜ。夏の季語。
《広辞苑・第五版》
南の古い形に「いなみ」があり、その「いなみ」から吹く風なので「いなさ」
と呼ばれるようになったのだと考えられるそうです。
辞書の説明にもあるとおり中国・四国以東の主に太平洋側の地域で、南東方
の海から吹く風の名としてこの言葉が使われます。
別名の「たつみかぜ」は、漢字で書けば「辰巳風」。辰巳は南東の方角を指
す言葉ですから、辰巳風でズバリ、南東方向から吹く風を表します。
「いなさ」も「辰巳風」も南、または南東方向から吹く風なら、一年中いつ
でも「いなさ」でよさそうなもので、春先に吹く南風をこう呼ぶ例もあるそ
うですが、今では専ら梅雨前後に吹く風についてだけ、使うことが多くなっ
ているようです。
関東地方の古い家屋は、冬の間の冷たい北西風を遮り、夏場に吹く南東風を
取り入れるような向きに建っているそうで、夏は戸障子などを外し、家具調
度もかたづけて、風が通り抜けるようにして暮らしたとか。
冷房設備など無かった時代でも、その季節に吹く風の恵を巧く使って案外快
適に暮らしたのかも知れません。
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