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【ひだるい】(饑い)
 『形・古』ひだる・し(ク)
 ひもじい。空腹である。
 古今著聞集12
 「この一両日食物(じきもの)絶えて、術(せん)なくひだるく候ままに」
   《広辞苑・第五版》

 それまで元気に歩いていたのが、急に猛烈な空腹に襲われ、力が抜けて動け
 なくなってしまう、そんなことがあります。

 昔から山を歩いているようなときに、何の前触れもなくいきなりこうした状
 態に陥ってしまうことが有ることが知られていて、あまりに急に起こるので
 昔の人はこうした状態に陥るのは「ひだる神」と呼ばれる悪神が取り付いた
 からだと考えました。

 ひだる神は餓鬼の一種と考えられていて、山の中によく現れると考えられて
 いました。
 ひだる神に取り付かれたときに、そのまま放っておくと死んでしまうことも
 あるという、危険な神(妖怪?)です。

 ひだる神に取り付かれたときには、何か食べ物を口にすることが肝心。何か
 一口でも口にすると嘘のように元気が戻ってきます。地方によっては山には
 入る場合にはこのひだる神に取り付かれたときのために、どんな時にも弁当
 の中身は一口分残しておけという言い伝えが有るそうです。

 「ひだる神に取り付かれる」現象は、今で云うところの空腹時低血糖症の症
 状です。空腹時に烈しい運動など行うと、こうした状態に陥ることが有りま
 す。

 私も以前、登山中に突然、身体に力が入らなくなって動けなくなってしまっ
 たことが有ります。背に背負った荷を下ろすこともままならないほどの状態。
 荷の中にあった食べ物を取り出すことすら出来ない有り様でしたが、シャツ
 のポケットに入っていた飴を口にしたら、嘘のように元に戻りました。

 山の中とは云わなくとも、空腹も忘れて何かに夢中になっていると、突然に
 ひだる神に取り付かれてしまうことがあるかもしれません。
 「寝食を忘れて」とはいいますが、そんな状況でもやはり「食」を忘れない
 ように。

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