こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
【とはいうものの お前ではなし】
 世の中に 人のくるこそ 嬉しけれ
 とはいうものの お前ではなし
  《頼山陽》

 この言葉、応用がききそうだな・・・という言葉。それが本日取り上げた

  「とはいうものの お前ではなし」

 元は日本外史を著した頼山陽の戯歌の一部。
 いつもは単語一つを取り上げることの多いコトノハですが今日は、趣を変え
 て少々長い言葉でスタートです。

  「近くまで来る用事があったので、
   どうしているかなと思ってよってみた」

 思いもよらぬ時に、こんな風にぶらりと気の合う友人が訪ねてくるようなこ
 とがあれば、これは嬉しい。旧友に限らず人と人とが出会うことは嬉しく楽
 しいことが多いものです。が、中には例外も。

 何となく話がかみ合わない人、話していてもつまらない人というものはある
 ものです。どこがということはなくても、なんだか好きになれない人。
 更に困ったパターンは、なぜか先方はこちらのことが気に入っているらしく、
 用もないのにやって来る。こちらとしても明確な断る理由がないので内心は
 渋々ながら、つまらない話に付き合わざるを得ない。

 早く帰ってくれないかなと表情には出さないようにと気を付けながら応対し
 ているときに、頼山陽のこの戯歌が頭をよぎります。
 そんなときには、

  もしかしたら私も、他の人に同じ思いをさせているかもな。

 それならある意味「お互い様」。そう考えて我慢するかな?
 とはいいながら、出来ればこんな苦痛の時間はなければないにこしたことは
 ない。こうした苦痛の時間の唯一の効用は、この話の合わない人が帰って行
 く瞬間の何ともいえない開放感を生み出してくれることでしょうか。

 嫌だな、と思っていたら「おっと、そういえば今日は時間がないんだった」
 とかいって、この人が案外早く解放してくれたりしたら、いいことがあった
 気分になったりして。

  楽しみは いやなる人の 来たりしが
  長くもおらで かえりける時
   《橘曙覧》

 あ、やっぱり誰しもそんな風に感じるんだな。
 暑い鬱陶しい夏をよりいっそう鬱陶しくするそうした人が来ないことを祈り
 つつ、知らないうちに自分自身が誰かから

  「とはいうものの お前ではなし」

 と思われないよう、気を付けたいと思います。

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