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【梅に鶯】(うめに うぐいす)
 とりあわせのよいことのたとえ。
   《広辞苑・第六版》

 二つのものが調和して取り合わせがよいもの。
 似合っているもの。

 取り合わせのよいものの喩えといえば他にも、柳に燕、松に鶴、牡丹に唐獅
 子、紅葉に鹿、といろいろと有りますけれど、その筆頭にまず思い浮かぶ組
 み合わせはこの、梅に鶯ではないでしょうか。

 「梅に鶯」といえば思い浮かぶのは花札の梅の図柄。
 花の盛りの紅梅の枝に、黄色の喉に黄味がかった濃緑の羽を持った鶯がとま
 っている図です。

 冬の寒さが去り、花を開かせた梅の枝に鶯がやってきて、梅の花蜜を吸いな
 がらその合間々々にホーホケキョと鳴く声を聞けば

  ああ、春がやってきたんだな

 と感じます。
 こんな具合に、春の訪れを感じさせてくれる取り合わせとして親しまれてき
 た「梅に鶯」ですが、この言葉のような取り合わせを現実に目にすることは
 まずありません。

◇鴬(うぐいす)じゃなくて目白(めじろ)
 鴬は笹藪などの茂みを好む鳥なので、人目につく梅の枝に鴬が留まるという
 ことはなかなか無いそうです。なにより、鴬の羽色は茶色がかった褐色。
 梅に鴬の言葉で浮かぶ花札の絵柄にある緑の羽を持った鳥ではありません。

 梅の枝にやってきてその花蜜を吸うことを好む鳥は目白。
 こちらの羽色は黄色がかった濃緑色、喉の辺りは黄色。
 どうやら、「梅に鴬」ではなくて、「梅に目白」が本当の組み合わせのよう
 です。

 目白の鳴き声は、チーチーチュルチュルチュルーーチーという具合で、鴬の
 鳴き声とは大分違います。

 梅の枝に目白が留まり、その花蜜を吸っているところに、近くの藪の中に姿
 を隠したままの鴬がホーホケキョと鳴いているという、

  「梅に目白に鴬の声」

 吹き替え映画を作っているようなこんな図が、「梅に鴬」の現実の姿のよう
 です。
 とはいいながら、「梅に目白に鴬の声」では語呂がよろしくありません。
 目白には済まないと思いつつ、「梅に鴬」のまま使わせてもらいましょう。
 心の中では、「本当は目白なんだね」とつぶやきながら。

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