【葛の裏風】(くずの うらかぜ) クズの白い葉裏を返して吹く風。 赤染衛門集「かへりもぞする葛の裏風」 《広辞苑・第六版》 葛は新しく造成された土地や、河川敷の土手を覆い、線路の砂利の間からで も芽を出して伸び出す、生命力の旺盛な植物です。 葛の葉は、表は緑色ですが、その裏は銀白色。 風が吹くと大きな葛の葉が裏返り、白い道となって風の跡を示します。 葛の葉を裏返させるこんな風を「葛の裏風」と呼びます。 また、葛が風によって葉の裏を見せるさまを「裏見(うらみ)」と言います。 和歌などではこの「裏見」を「恨み」にかけて 秋風の ふき裏がえすくずの葉の うらみてもなほ うらめしきかな (古今和歌集 平貞文) こんな風に詠んだ歌が数多くあります。 戯れに葉を裏返しておきながら、行き過ぎて再び戻ってこない風を、葛の葉 はどんな風に感じているのでしょうか。 秋の一日、そんなことを考えながら葛の葉を裏返す風を眺めてみると楽しい かも知れませんね。日刊☆こよみのページ スクラップブック