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【星の入東風】(ほしの いりごち)
 (畿内・中国地方の船人の用語)
 陰暦10月中旬に吹く北東風。冬の季語。
  《広辞苑・第六版》

 船乗りにとって海上での風の急変は恐ろしいもの。
 そうした関係から、風の名前には船乗り達の用語として生まれたものが数多
 く有りますが、これもその一つ。
 陰暦十月の頃に吹く北東からの強い風をこう呼ぶそうです。

 本日2012/11/17は陰暦で表せば10/4。ちょうどこの風の吹く季節ということ
 になります。

◇星は「すばる」?
 江戸時代の全国の方言を集めた辞書、『物類称呼(ぶつるいしょうこ)』に
 はこの「星の入東風」の解説に

  夜明けにすばる西に入る時吹くなり

 と有りますから、この言葉の「星」はすばる(昴)星ですね。
 昴は、おうし座のプレアデス星団と呼ばれる天体で、枕草子でも「星は昴」
 と名をあげられた星(星々)です。

 肉眼でも4〜7個程度の星が集まって見える星団で、「すばる」という名前は
 星が集まっていることから「統べ(すべる)」という言葉から生まれたのだ
 と云われる星です。

 あまり明るい星では有りませんが、見分けやすい姿からか、古くからよく知
 られた星でした。昔の船乗り達もこのよく知られた星を航海する際に利用し
 ていたのでしょう。

 これを書いている時期ですと、昴は大体日暮れの頃(17時頃)に東の空から
 昇り、日の出の頃( 6時半頃)西の地平線(海の上なら水平線)に沈んで行
 きますから、『物類称呼』の説明のとおり「夜明けにすばる西に入る」のが
 今の時期と云うことになります。

  この季節には、昴星が西に沈む夜明けの頃に、急に風の様子が変わり、
  北東から強い風が吹き出すことが有るから、気をつけろ

 「星の入東風」は、昔の船乗り達の知恵が生み出した風の名前でした。

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