日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
【星の入東風】(ほしの いりごち)
(畿内・中国地方の船人の用語)
陰暦10月中旬に吹く北東風。冬の季語。
《広辞苑・第六版》
船乗りにとって海上での風の急変は恐ろしいもの。
そうした関係から、風の名前には船乗り達の用語として生まれたものが数多
く有りますが、これもその一つ。
陰暦十月の頃に吹く北東からの強い風をこう呼ぶそうです。
本日2012/11/17は陰暦で表せば10/4。ちょうどこの風の吹く季節ということ
になります。
◇星は「すばる」?
江戸時代の全国の方言を集めた辞書、『物類称呼(ぶつるいしょうこ)』に
はこの「星の入東風」の解説に
夜明けにすばる西に入る時吹くなり
と有りますから、この言葉の「星」はすばる(昴)星ですね。
昴は、おうし座のプレアデス星団と呼ばれる天体で、枕草子でも「星は昴」
と名をあげられた星(星々)です。
肉眼でも4〜7個程度の星が集まって見える星団で、「すばる」という名前は
星が集まっていることから「統べ(すべる)」という言葉から生まれたのだ
と云われる星です。
あまり明るい星では有りませんが、見分けやすい姿からか、古くからよく知
られた星でした。昔の船乗り達もこのよく知られた星を航海する際に利用し
ていたのでしょう。
これを書いている時期ですと、昴は大体日暮れの頃(17時頃)に東の空から
昇り、日の出の頃( 6時半頃)西の地平線(海の上なら水平線)に沈んで行
きますから、『物類称呼』の説明のとおり「夜明けにすばる西に入る」のが
今の時期と云うことになります。
この季節には、昴星が西に沈む夜明けの頃に、急に風の様子が変わり、
北東から強い風が吹き出すことが有るから、気をつけろ
「星の入東風」は、昔の船乗り達の知恵が生み出した風の名前でした。
日刊☆こよみのページ スクラップブック