日刊☆こよみのページ スクラップブック
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【溝萩】(みそはぎ)
(禊萩(みそぎはぎ)の意か。ミゾハギとも)
ミソハギ科の多年草。日本全土、朝鮮半島に分布。
高さ80センチメートル。夏、淡紅紫色 6弁の小花を長い花穂に密生。
盂蘭盆会(うらぼんえ)に仏前に供える。
春、若葉を食用。精霊花。ミズカケグサ。漢名、千屈菜。秋の季語。
《広辞苑・第六版》
私の自宅のある和歌山県の那智勝浦町の田んぼ道を歩くと、田んぼと田んぼ
の間の水路に沿って、溝萩が並んで生えているのを目にします。
月遅れのお盆の時期である八月になる頃になると、この溝萩は淡い赤紫の小
花を咲かせます。
夏の陽に熱せられた風が、溝萩の小花の並んだ花穂を揺らす頃になると、お
盆がやって来たなという気になります。
お盆はご先祖様の霊が帰ってくる時ですから、溝萩はご先祖様の帰りを知ら
せる花でありました。
私の生まれ故郷の福島県の田舎でも、やはりお盆の時期になるとこの花が田
んぼの周りに咲いていました。実に丈夫な植物ですので、今も日本のあちこ
ちで、この淡紅紫色の花穂が風に揺れていることでしょう。
◇「溝萩」は「禊萩」
水辺を好む溝萩は既に書いたとおり、田んぼの間の水路や溝に沿って咲いて
いることが多く、そうした光景を当たり前に目にしておりましたので、溝に
咲く萩に似た花なので「溝萩」と云うのだと思っていましたが、どうやらこ
れは誤りのようです。本来の名前は「禊萩」。
溝萩の花穂を水に浸し、その水で盆の供物に水をかけ浄めるために使われた
ことから、禊ぎに使われる萩という「禊萩」という名が付いたものだそうで
す。きっと私のようなおっちょこちょいが「ミソハギ」の名を聞いて、
ああ、あの溝に咲く花。溝萩か
と誤って伝えてしまったのが禊萩が溝萩へ転じた元のようです。
禊ぎに使われる神聖な花に、何とも申し訳ないことであります。
盆の供物のお浄めにつかう禊萩は盆には欠かせない花の一つで、精霊花(し
ょうりょうばな)という名前でも呼ばれます。水掛草(みずかけぐさ)とい
う異称もありますが、こちらは盆の供物に水をかけるために用いたことから
生まれた名前でしょう。
今年も間もなく月遅れのお盆。
暑い夏の夏の終わりの風景の中に、風に揺れる禊萩の淡紅紫の花穂が見える
季節になりました。
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