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【穂波】(ほなみ)
 稲などの穂が風にゆらいで波のように見えるさま。また、その穂。
 新古今和歌集秋「風渡る山田の庵(いお)をもる月や穂波に結ぶ氷なるらん」
   《広辞苑・第六版》

 広辞苑の用例に引用された歌は元久元年(1204)の中秋の名月の夜に詠まれ
 た歌だそうです。
 名月の冷ややかな光に照らし出された稲穂が風に揺れる様を詠んだ歌です。

 この時期、秋が深まり水を落とした田圃には頭を垂れた稲穂が並びます。
 夏は青々としていた稲の葉の色も黄味を増して、青く澄んだ秋の空の下で見
 る田圃は黄金の海のようです。
 その黄金の海に立つ波、田圃の上を風が渡るとき揺れる稲穂が作る波、それ
 が穂波です。

 目に見えない風が、穂波となってその姿を現します。
 目に見えない秋風にのって、目に見えない神様が田の上を渡っているのかも
 しれません。

 山の木の葉がその色を変える頃、田圃の稲も刈り取りの時期を迎えます。
 穂波となって田の上を見えない風を眺める楽しみも間もなく来年までおあず
 けとなります。

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