こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
【練炭】(れんたん)
 無煙炭・コークス・木炭などの粉末に粘着剤をまぜて押し固めた燃料。
 円筒形で、燃焼をよくするため縦に数個の穴を通してある。冬の季語。
   《広辞苑・第六版》

  練炭の六つ穴炎また炎  斎藤夏風

 練炭の穴って、六つだったか。もっと沢山あったと思うけれど。
 冬の初めは、厳冬の頃よりもなお「寒さ」を感じるように思えます。
 まだ寒くなり始めたばかりで身体が寒さになじんでいないためでしょうか。

 寒さ意識すると、恋しくなるのが火。
 最近の電気式の暖房器具には「火」はありません。
 ガスや灯油の暖房器具でも火がはっきりと見えるようなものはほとんど無い
 と思いますが、そんな現代にあっても暖をとると考えると頭には火、炎の姿
 が浮かんできます。

 斎藤夏風の句を読むと、練炭の穴の数こそ浮かんできませんでしたが、その
 穴から仄見える、炎の姿ははっきりと思い浮かびました。
 練炭の穴の数が気になって、インターネットで練炭の画像を探すと、現れた
 練炭の画像には十数個の穴が。

 規格で決まっているというものではなさそうです。また、大きさによっても
 違っているのでしょう。もしかしたら、私が知らない小型の練炭があって、
 そうしたものは六つ穴ということもあるのでしょうか。

 子供の頃の家の掘りごたつには、練炭が使われていて、炬燵の底で赤く燃え
 る練炭が、足を入れようと炬燵布団をまくる時にちらりと見えたことを思い
 出します。炬燵の中の練炭に火を熾すために、火の点いた炭を載せたりした
 ことも思い出しました。

 今の子供達は、練炭なんか見たことがないでしょうし、火を熾す手間がかか
 って、スイッチ一つですぐに暖かくなるわけではないといっても、それがど
 んなことなのか、想像出来ないでしょうね。

 炎の出ない暖房器具は、火を熾すといった手間はありませんし、何より安全
 ですが、そうした暖房器具と炎が見える暖房器具とでは、温度を上げる効果
 に優劣はないとしても、感じる暖かさには違いがある気がします。

 炎の出ない暖房器具に囲まれて育つ子供達が、何十年かして今の私と同じ年
 になったとき、暖房が恋しいと思う季節にはいったい何を恋しいと思うのだ
 ろう?

 昔見た、チロチロと穴からのぞく練炭の炎を思いながら、そんなことを考え
 てしまいました。

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