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【水道育ち】(すいどう そだち)
 江戸っ子が玉川上水・神田上水などの水道の水で育ったことを自慢すること
 ば。
   《広辞苑・第六版》

 言葉の意味は微妙に変化するものだなと思いました。
 そう思う切っ掛けとなったのは、「水道育ち」という言葉。

 「水道」も「育ち」も、現在でもあたりまえに使う言葉ですすが、この二つ
 を繋げて「水道育ち」という言葉としたら、その言葉が

  江戸で生まれたことを得意がって言う言葉

 になるとは。現在の常識だけでは、とても想像出来ないことです。
 私は辞書でこの言葉を偶然引いてしまうまで、こんな言葉があることを知り
 ませんでした。この「水道育ち」はまた「水道の水で産湯を使う」とも使う
 そうです。

 ここで云うところの「水道」とは、江戸の街に作られていた玉川上水や、神
 田上水のことです。

  水道の水を産湯に浴びて、お膝元に生まれ出ては・・・

 という具合に使って、江戸の生まれだということを誇ったようです。
 近世の水道は、織豊時代以降、都市への人口集中が始まって、それまでの貯
 水池などでは都市の水需要をまかなうことが難しくなって、作られるように
 なったものだといいます。

 もちろん、こうした事情は江戸以外の都市にも共通しているでしょうから、
 江戸以外にも水道は作られたようですけれど、作られた時期や規模の大きさ
 などによって、水道といえば江戸の玉川・神田の両上水道と誰もが思うほど
 二つの水道が有名になったのでしょう。

 今は「水道」といっても、玉川上水や神田上水を思い浮かべる人はいないで
 しょうから、

  「水道育ち」

 といっても、何のことやらわからないわけです。
 ちなみに厚生労働省の「水道普及率の推移」という資料を見ると、2013年に
 おける日本の上水道普及率(総給水人口÷総人口)は、97.7% とのこと。
 今の世の中であれば、「水道育ち」は日本に住む人の 97.7%を指す言葉とな
 るのでしょうかね?

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