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【危険半円】(きけん はんえん)
 [気]移動する熱帯低気圧の進行方向に対し、北半球では右側、南半球では
 左側の半円。風や波が強く、低気圧の進行方向に船が流されるので危険。
 [対義語]可航半円。
   《広辞苑・第六版》

 夏から秋にかけての台風シーズン、一つ去ったかと思うとまた次の台風。
 なかなか、気の休まる暇がありません。
 台風が日本に近づいてくると気になるのはその進路。

 西に向かうか東に行くか。
 偏西風に乗って東に向かえば、今度は北寄りか、南寄りかが気になり始めま
 す。我が家のある場所はその進路の右側か左側かも。
 右側だったら、大分荒れそうだと。
 なぜなら、危険半円に位置することになるから。

 台風の周囲には北半球では反時計回りの風の渦が出来ます。
 台風が一カ所に留まっているのであれば、その風の力は台風の中心からどの
 方角を見ても、同じものになりますが、台風の場合それ自体が移動します。
 移動速度は、時速にして40kmとか60kmとか、様々です。仮に時速40kmだとし
 て考えると、この速度は秒速では約11m。

 台風の周囲で、台風の進行方向と同じ向きの風が吹いている地域では、この
 台風の移動速度である秒速11mが風を強める方向に働きます。つまり、台風
 が動かなければ風速20mであった風が

  20m/s + 11m/s = 31m/s

 ということになります。逆に風の向きと台風の動く向きが逆になっていると

  20m/s - 11m/s =  9m/s

 ということになります。31m/sの風と9m/sの風では、えらい違いです。
 これが、危険半円と可航半円が出来る理由です。

 広辞苑では、この言葉を[気]としていますから、気象用語として扱っている
 のが分かります。ただ、対義語として挙げられた言葉が「可航半円」である
 ことから想像すると、気象は気象でも、一般の気象と言うよりは船舶の運航
 に関係した船舶気象用語として生まれたように思われます。

 「可航半円」とは船舶が航行可能な半分の領域という意味です。その逆はと
 いえば、航行に危険な半分の領域ということで「危険半円」。
 船舶はできる限り安全な「可航半円」の領域を航行しようと考えてその針路
 を考えます。「危険半円」や「可航半円」という言葉は、そうした船舶の安
 全に関わる気象用語として生まれた言葉です。

 移動可能な船舶なら、針路を変えて安全な領域を選ぶことも不可能ではあり
 ませんが、残念ながら住む家のような移動の出来ないものは、そうは行きま
 せんから、自分の家が危険半円の中に入るのか、比較的安全な可航半円に入
 るのかは、気まぐれな台風の進路次第と言うことになります。

 次の台風では、どちら側になるのかな?
 秋は半ば。このハラハラ、ドキドキは、まだ当分続きそうです。

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