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■ユリウス通日の話
 この日刊☆こよみのページのデータ先頭部分に

  西暦 2006年 10月 16日 (第3月曜日)
  ユリウス通日 2454024.5 (日本時 9時の値)

 という表示があります。他はわかるとして『ユリウス通日』って何かご存じ
 ですか?

 暦には時々「改暦」があって、改暦前後で記述された年月日の関係がわかり
 にくくなることがあります。
 その混乱を避けるために改暦等とは無関係に、ある基点から数えた日数で出
 来事を表そうとスカリージェ(Josephus  Scaliger)が1583年(※)に考案し
 たものです。

 ちなみにこれを考えるきっかけはユリウス暦からグレゴリウス暦への改暦に
 よる混乱の回避でした。

◇基点となる日はいつか?
 今日の値は 2454024.5 ですからその基点は何時かというと大体、

  2454024.5(日) / 365.2422(日/年) = 6718.9 (年)

 随分昔ですね。
 この基点はユリウス暦で数えた BC4713/1/1グリニッジ正午です。
 基点となったBC4713/1/1 は何があったのかというと、実は何もありません。

 暦にはいくつかよく使われる周期があるのですが、スカリージェはその内の
 3つの周期

  太陽章 (28年。ユリウス暦において1年の曜日が同じ配列に戻る周期)
  太陰章 (19年。太陽年と平均朔望月周期が一致する周期。メトン周期)
  インディクティオ (15年。Indictio。古代ローマの行政上の周期)

 の始まりが一致する年として考えられました。上記3つは7980年毎に一致し
 ます。スカリージェが考えた時、その最初の一致年がBC4713年だったのです。
 更に7980年遡ってもいいのですが、BC4713まで遡れば、歴史上の出来事を記
 述するのにほとんど問題にはなりませんので、それより前には遡られません
 でした。

◇なぜ、端数「0.5」が付くのか
 昔々のヨーロッパでは正式な日付は正午に変更されるという慣習がありまし
 たので、計算基点に「グリニッジ正午」の文字が残りました。
 現在は日付の変更は0時に行われるようになりましたので、その日の始めの
 ユリウス通日はというと、この端数「0.5」 が付くのです。
 (正午の日付変更の慣習は天文の世界には最近まで残っており、1925年に廃
  止されるまで、天文日という日付は、グリニッジ正午に変わる事になって
  いました)

◇ユリウス通日とユリウス暦・・・二つの「ユリウス」の関係
 ユリウス暦の「ユリウス」はその改暦を命じたユリウス・カエサル(シーザ
 ー)の名を記念したものですが、ユリウス通日のユリウスとはこれとは無関
 係。スカリージェの父親が「ユリウス」だったので、父の名をとってつけた
 もの。たまたまユリウス暦とよく似た名前となってしまったため、誤解のも
 ととなっています(迷惑な話だこと)。

 以上、ユリウス通日の話でした。

※スカリージェがユリウス通日を考案した年を当初は
  『こよみ』 (東京大学公開講座70 東京大学出版会刊)
  『時と暦』 (UP選書 青木信仰著)
 などに記載された1629年としておりましたがスカリージェの没年は1609年で
 り、矛盾しているとのご指摘があり、調べ直して
  『Calendrical Calculations』 (Reingold&Dershowitz 著)
 の説明にあった1583年に修正しました。
 スカリージェがユリウス通日を考案した切っ掛けがユリウス暦からグレゴリ
 オ暦への改暦での歴史上の年月日の混乱を防ぐためということを考えると、
 改暦の行われた1582年の翌年の年に考案されたという説明は納得できるもの
 だと考えています。

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