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■再び月齢の話・・・日本と海外の月齢
 一旦終了した月齢の話でしたが、

  「海外での月齢はどうしたらわかるのか」

 という質問がありました。そうか、この話がまだだったなということで今日
 は再び月齢の話です。

 海外(日本以外)での月齢がどうなっているかを考えるためにまず、月齢が
 どうやって決められるか、おさらいをしましょう。
 一昨日(10/25) の月齢の話その1で月齢の定義は

  「月齢とは直前の新月の瞬間からの経過日数」

 だと書きました。この定義からすると「新月の瞬間」を知ることが先決。
 では、例として、日本とイギリスを例にとって考えてみましょう。これを書
 いている日の直近の新月の時刻はと言うと

  日本  ・・・ 2006年10月22日 14時14分 (日本標準時)
  イギリス・・・ 2006年10月22日 05時14分 (グリニッジ標準時)

 上記のように日本とイギリスでは新月の時間が異なりました。

   「そうか、場所によって新月の瞬間は違うんだ。そうか。どれくらい
    違うのかというと、お、ちょうど9時間だな。」

 あれれ。
 気が付きましたか。「9時間の差」はちょうど日本標準時とグリニッジ標準
 時(ロンドン標準時?)との時差9時間と同じ。偶然か・・・いえ、偶然で
 はありません。この9時間の差はまさに日本とイギリスの時差そのものなの
 です。論より証拠。この新月の時間を両方世界時で表してみると、

  日本  ・・・ 2006年10月22日 05時14分 (世界時)
  イギリス・・・ 2006年10月22日 05時14分 ( 〃 )

 同じです。つまり「新月の瞬間」は日本でもイギリスでも同じ瞬間なのです。
 新月は、太陽と月の黄道座標(主に太陽や月、惑星といった太陽系の天体を
 表すのに使われる座標系です)の黄経が同じになる瞬間とされています。難
 しい言い方になりましたが、要は太陽と月が同じ方向に見える瞬間と言うこ
 とです。そこで問題はこのときの

  「同じ方向に見える瞬間」

 とは、どこで見た時の話かということなのです。日本?、イギリス、それと
 も??? 答えは日本でも、イギリスでもありません。地球の中心(天文学
 ではこれを「地心」と呼びます)で見た瞬間なのです。

 もちろん、地球の中心から見ることなど出来るはずはないので、「見えたと
 したら」という計算上の話ですが、地球を中心でものを考えますから、日本
 であろうが、イギリスであろうが、はたまた他の国であろうが、差はなく同
 じ瞬間となるのです。

 さて、月齢の話に戻りましょう。
 月齢の計算の基点となる「新月の瞬間」が世界中同じなのですから、同じ瞬
 間の月齢はこれまた世界中同じなのです。
 同じ瞬間というと、

  「日本でも、イギリスでも同じ時間と言うことですか」

 という質問がありますが、最初に新月の瞬間は日本標準時とグリニッジ標準
 時では異なったとおり、それぞれの国での「時計の上の時刻」では違うよう
 に見えます。が、海外旅行などの際に経験する「時差」によるものであって、
 見かけ上の差に過ぎません。

 仮に日本とイギリスで時計の示す時間が異なっていたとしても異なる瞬間で
 はないことはわかりますね?
 最初の例で言えば

   日本で、10月22日 14時14分にイギリスに電話をかけると、イギリス
   ではその電話を10月22日 05時14分にとる

 と言うこと。時差が9時間あると言っても、この電話で話をしている人たち
 の会話に9時間の時間がかかるわけでは無い。時計の示す時刻が何時であろ
 うが、この電話のこちら側とあちら側は「同じ瞬間」に話をしている。新月
 や月齢で言う「同じ瞬間」とはこれと同じ意味です。

 簡単な話なのに大変くどい説明を加えましたが、この簡単な話が誤解される
 ために月や太陽に起こる様々な現象について日本と海外では違うのではない
 か、たとえば日本で新月の時、地球の裏側では満月だ・・・なんていうとん
 でもない話・・・がまことしやかに語られることになるのです。
 よって、くどいとわかりつつくどい説明をしておきました(私がくどい性格
 だからではないです)。

 さてさて、ここで結論。

  「以上のように日本でも、海外でも同じ瞬間の月齢は皆同じです!」

 書きながらも、ちょっとくどすぎないかと思った今日のこぼれ話はここまで。
 ではまた次回をお楽しみに。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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