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■年越し蕎麦(そば)
 大晦日と言えば年越し蕎麦。
 皆さんも今晩は年越し蕎麦を食べるのでは?

◇なぜ年越し蕎麦か
 年越し蕎麦の慣習は江戸の中期に起きたと言われます。意外と新しい。
 なぜ年越しには「蕎麦」なのかというと、これは次のような蕎麦の縁起の良
 さだと考えられます。

 1.蕎麦の細く長い形状
  よく人生を「太く短く」とか「細く長く」などと表現します。太さに関し
  てはひとまず置くとして、長短に関して言えば、長くはすなわち長寿を意
  味する縁起のよいこと。
  この長寿を連想させる細く長い蕎麦の形状に、

   今年も無事に過ごせました。
   来年もまた、無事に過ごせて長寿を得られますように

  という感謝の気持ちと祈りを込めたものです。このためでしょう、年越し
  蕎麦を「長寿蕎麦」などと呼ぶ地方も有るそうです。
  ちなみに「細く」の方は、まあ自分のことですから謙譲の気持ちから控え
  めに言ったってことでしょうね。

 2.蕎麦は金を集める
  金銀の細工師達は、仕事の後で蕎麦粉を練った蕎麦団子で仕事場に飛び散
  った細かな金銀の破片を集めたと言います。

  蕎麦団子を押しつけると細かくてとてもつまむことなど出来ない小さな金
  銀の破片が張り付いてくると言います。こうして飛び散った破片を蕎麦団
  子で集めた後、この蕎麦団子を水で溶くと蕎麦は水に溶け、金銀は溶けま
  せんので貴重な金銀を無駄なくかき集められるわけです(蕎麦団子ごと、
  燃やしてしまうと言う話も聞いたことがありますが、水で溶く方が簡単そ
  う)。

  このことから、蕎麦は「金を集める」もの、つまりはお金持ちになれる縁
  起物と考えられるようになったのです。

 3.蕎麦は丈夫な作物
  作物のソバは細くて華奢に見えます。強風によって吹き倒されもするので
  すが、そこからが偉い。倒れてもしばらくするとまた起きあがって(と言
  うか、倒れたところから)上向きに伸びて行きます。
  ソバは倒れない、縁起のよい物なのです。

 4.蕎麦は大量に作れる・素早く食べられる
  江戸時代の商習慣は現金払いではなく、掛け売り。つまり「ツケ」での物
  の売買が当たり前。となると、月毎とか、盆暮れとかの節目はその「ツケ」
  の回収で大忙し。大晦日はその最たる日であった訳です。

  ですから、江戸の商家ではゆっくり食事をとる暇もない有様。そこで、短
  時間に大量に茹でられて、手早く食べることの出来る蕎麦は商家の味方。
  と言うことで何時しか大晦日には「蕎麦」という慣習が出来たとか。

 1 に関しては全員に関係することですし、2〜4は縁起的にも実利的にもお金
 を扱う人々にとっては有難い。こうして何時しか「年越しには年越し蕎麦」
 となったのだと考えられます。

 今年もまた除夜の鐘を聞きながら年越し蕎麦で暮れて行きます。
 何はともあれ、皆さんよいお年をお迎え下さい。


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