日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■宵の明星
「夕方、西の空に見える明るい星はなんでしょう?」
と質問がありましたので、今日はこれを採り上げてみましょう。
この明るい星の正体は金星。今は夕方の空に明るく見えることから、
「宵の明星」
と呼ばれる時期に当たります。
「今は夕方の空に」と書いたように、いつも夕方に見える訳ではありません。
ある時は夕方の一番星として見え、またある時は明け方の空に他の星が消え
た後、最後まで輝いている星にもなります。明け方に見える場合は、
「明けの明星」
と呼ばれます。
金星は太陽系の内側から二番目の惑星。地球より内側の軌道を巡る惑星です
ので内惑星と呼ばれます。
内惑星の特長としては、太陽から大きく離れることが無くそのため、日没後
か日の出前にだけ見えることになります。金星が太陽からどれくらい離れて
見えるかというとこの最大の角度は約47°。これより離れることは有りませ
ん。
何時だったか夜の高い空(見上げるくらい)に明るい星が見えていることが
あり、それを指して、
「あの一番明るい星が、金星だよ」
と説明している人がいて、「訂正してあげた方が良いのか否か」に悩んだこ
とがありましたが、これは誤り(見ず知らずの人でしたので、結局訂正はで
きませんでした)。
金星は太陽から47°以上離れて見えませんから夜に見上げるほど高い場所に
見つけることは出来ません(このときの星は木星でした)。
今期の金星は昨年末頃から夕方の空に見え始め、いま少しずつ高度を上げて
きています。1/20頃の日没時の金星の高度はおよそ18°。
この傾向は当分続き、6/9 に一番太陽から離れ(東側に一番離れるので、
「東方最大離角(とうほうさいだいりかく)」と呼ばれます)、このときの
太陽からの角度がおよそ45°。日没時の地平線からの高度はおよそ40°ほど
になります。
この東方最大離角以後は高度を急速に下げて 8月の始めには見えなくなり、
9月の上旬には今度は明けの明星として明け方の東の空に姿を現すようにな
ります。
1/20の金星は
日没時の地平線からの高度 約18°
明るさ -3.9等星 (星座で一番明るい星1等星の約100倍の明るさ)
見かけの直径 10.6″ (月の 1/170。小さいですね)
地球からの距離 1.56天文単位 (2億3400万km)
内惑星のもう一つ特長として、月のような「満欠」をすることがありますが、
今はまだ満月に近い状態(十六夜の月くらいでしょうか)。これからだんだ
んと欠けて来ます。今はまだ小さいので見づらいですが、 6月辺りから望遠
鏡で眺めると欠けた金星の姿が見えるようになります。
これから夏までの間、日没後の西の空に一際明るい星を見かけたら、それが
金星です。
しばらく美の女神 Venusの名を与えられたこの星を夕方の空に眺めて下さい。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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