日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■山がちな場所での日の出の時刻は
Web 版のこよみのページでは、指定した場所での日出没を一月単位で計算す
ることができます。このため、「日の出」の時刻を計算するため定期的にこ
よみのページを訪れる方も多いようです。
さて、そんな中で時折寄せられる質問に、
山がちな地方での日の出はどうやって計算するのでしょうか?
と言うものがあります。山がちな地方というと長野や山梨と言ったところが
浮かびますが、考えてみれば日本中で、山が見えないような場所はまずあり
ませんから、日本全国で考えられる問題と言うことができますね。
この問題を考えるためには、日の出というものがどんなものかを考える必要
がありますので、そんな話から考えてみましょう。
◇基本的な日出時刻計算
基本的な日出時刻の計算は、地平線や水平線が見えるような場所で、その地
平線等から太陽が顔を出す時刻として計算します。
イメージ的には、海辺に立って、海から昇る日の出を眺めると考えると判り
やすいです。
日本では、「地平線」が見える場所というのはほとんど無いので、今後はこ
のイメージに沿って一般的な計算の説明には「水平線」を使うことにします
(どちらも計算の原理からは同じものなので)。
この「水平線」とはなにか?
皆さんがよくご存じの通り、地球は丸い。もし地球が凸凹のないつるつるの
表面であったとして、その表面に立った人間が見ることのできる一番遠い地
球の表面を結んだ線が水平線です。
目の高さが1.5mの人が地球サイズの球の上で見える水平線までの距離は幾何
学的には、ピタゴラスの定理(小学校で習う?)で簡単に求まります。
6378.0015 × 6378.0015 - 6378.0 * 6378.0 = 地平線までの距離の二乗
≒ 19.1 (距離の単位は km)
水平線までの距離 → 19.1の平方根 ≒ 4.37km
と言う具合です。ちなみに6378kmは地球の平均半径(概略)です。
普通の日出時刻の計算というのは、この水平線から太陽が顔を出す瞬間とし
て計算されます。
もっとも、これは地球に空気が無い場合の話で実際には大気差という大気屈
折現象の補正や、見る人の目の高さの見込みなどを考慮して補正しますので
もうちょっと複雑ですが原理的にはこのとおりです。
◇山があったら水平線(地平線)は見えるか
では遠くに山があるような場合、地平線は見えるか考えます。計算が面倒に
なりますので計算自体は省略して、結果だけで考えてみます。例として1000m
の山があったとして、その山までの距離から、山が水(地)平線上に見えて
しまうかどうか考えてみます。
A.山まで 10km ・・・ 見える (+5.7度)
B.山まで100km ・・・ 見える (+0.2度)
C.山まで200km ・・・ 見えない(-0.5度)
最後の()内は水平線からどれくらいの高さに山の山頂が見えるかという角
度です。この値がプラスなら、山の頂が水平線の「上」に見えます。
上記の計算では、距離が 123km程の地点で、山の頂と水平線が一致しますか
ら、山がそれより近い場合は、「日の出」は水平線からではなくこの山の頂
からとなる場合が考えられます(日の出の方角と山頂の方角がぴったり一致
したならですが)。
狭い日本、そのうえ1000m 位の山なら沢山ありますから、事実上真の水(地)
平線は見えず、その上に見えている山の頂の連なりが事実上の水(地)平線
を形づくっていることになります。
◇日出没は、山の頂を考慮しているか?
この質問に対する答えは、
「いいえ、一般的には計算上の水平線からの日の出を求めています」
となります。
写真を撮るためとか、何かの研究のためと言った特別な場合には山の頂を考
慮することもありますが、これはかなり特殊な例です。
(ちなみに、こよみのページの日出没計算では、「出没仰角」というデータ
を入れることで、これを考慮して計算することができます・・・宣伝)。
さて、ここからが本題・・・ですが、予定の長さを大分超過したので、お楽
しみはまた明日と言うことで、本日はここまで。
ではまた明日。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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