日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■「昴(すばる)」は休暇中
沖縄では梅雨の時期を「スーマンボウスウ(小満芒種)」と言うという話を
先日(2007/05/22号)に書きました。
これを書いている途中で、石垣島での梅雨の呼び名として面白いものが有る
ことを知りましたので本日はこの話を書くことにします。
◇石垣島では梅雨は「ユドゥン」
石垣島では梅雨のことをユドゥンと呼ぶそうです。
「ユドゥン」という言葉の意味は、渋滞するとか、よどむという意味がある
そうです。
よどむ → ユドゥン
でしょうか。発音は近いですから、言葉の訛りでしょうか。
さて、このユドゥンには他にも「休む」という意味が有るそうです。
よどむとか、停滞する状態を「休んでいる」と見る考えは理解出来ますね。
石垣島での梅雨はこの「休む」と関係有るそうです。
では、梅雨の時期は石垣島では何が「休む」のかというと、それは
昴(すばる)
です。枕草子に「星はすばる」と読まれたあの昴です。
◇「昴」の紹介
昴は、おうし座の M45。プレアデス星団と呼ばれる散開星団です。
地球からの距離は 410光年。およそ 100程の星から成る星団で、秋から早春
にかけてよく見える星です。
肉眼でも5〜7個くらいの星が、小さな北斗七星のようにまとまって見えます。
天体としては大変年齢の若い星々で、まあ星の赤ちゃんの集団といったとこ
ろでしょうか。
◇昴のお休みとは?
さて、ではなぜ梅雨の時期、昴はお休みなのでしょうか?
答えA:雨が多くて見えないから ・・・ ×(不正解)
答えB:夜の時間帯に見えないから・・・ ○(正解)
昴は、五月の半ば頃になると太陽に近い場所に見えるので、太陽が沈む頃に
同時に沈み、太陽が昇る頃太陽と一緒に昇ってきます。
つまり、5〜6月頃は昼間にしか空に昇らないのです。昼間では空が明るすぎ
て星の姿は見えませんから、昔の人はこの期間、
「昴」が休んでいる
と考えたのでしょう。
では、いつ頃からいつ頃までが「お休み」かと思って石垣島(石垣市)での
見かけの位置を計算してみました。
昴が肉眼で見えない条件として、
日出没時に地平線からの高度角が10°以下であること
とすると、この期間は 5/10〜6/1頃ということになります。
これからすると現在、昴はお休み中。人より大分早い夏休み(梅雨休み?)
中です。
◇昴の「ユドゥン」を知っていたころ
我々はなかなか夕方の星の位置など判りません。
ましてや明け方の星となると、この時刻に起きて星を眺めるという人はごく
少数でしょう。
でも農耕や漁労が主な仕事であった時代は、それこそ、
日の出と共に仕事が始まり、
日暮れと共に仕事を終わる
という生活を送ったでしょうから、夕暮れの星や明け方の星を眺めて季節を
感じると言うことが有ったのでしょう。
辺りが暗くなって、畑仕事を終えて家路に向かう頃、西の空には間もなく沈
もうとする昴を見て、ああもうすぐ梅雨の時期だなと思い、一日の仕事を始
めるためにまだ薄暗い外へ出ると、しばらく目にしなかった昴の姿が東の空
に認められると、間もなく梅雨明けかと感じる。
昴が夜空に「出勤」しない休みの時期を知って、それを「ユドゥン」と呼ん
だ時代。そんな時代があったことをこの言葉が記憶しているんですね。
◇お願い?
残念ながら今でもそういう呼び方をしているのかとすぐに尋ねられる石垣島
の知り合いなどおりませんので、「昔は」ということかもしれません。
このメールマガジンをお読みの方で、今でも使っているかどうか知っている
方、こんな言葉を知っていましたという方、いらっしゃいましたらメールを
頂けたら嬉しいです。
お願いします。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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