日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■本日、太陽の黄経は80°です
本日は、「暦の上での入梅」の日です。
この暦の上での入梅は、現在は
「太陽の中心の黄経が80°となる瞬間を含む日」
ということになっています。
現在は二十四節気も同様に黄経が15°ごとに分割されて、太陽の中心がその
角度に達する毎に、その角度に該当する二十四節気に入った(「節入り(せ
ついり)」といいます。
ちなみに、立春の節入りは黄経315°、春分は0°、夏至は90°という具合で
す。
◇黄経とは?
地球上の場所を表すのに「北緯35°,東経 135°」のように経緯度を用いる
ことがあります。
地球のような「球体」の表面の位置を示すのにこの経緯度を使った座標(極
座標)を用いると大変便利です。
ところで、空にはたくさんの星や月や太陽が見えます。
こうした様々な星の位置を表すにもやはり座標が必要になります。そして空
は昔から「天球(てんきゅう)」という言葉があるように、一種の球体とし
てとらえられてきましたので、その球体の上に見える星々の位置を表すには
地球上の位置を表すのと同じ、経緯度を用いた極座標が適していると考えら
れ、実際に使われてきました。
ただ地球上の経緯度と違って、天球上の経緯度の表し方にはいくつかの系統
があって、用途によって使い分けられています。
その一つが黄道座標で、主に月や太陽、それに惑星の位置を表すのに用いら
れてます。
暦の上での入梅や二十四節気の節入りの位置を示す「黄経」という言葉は、
この黄道座標の経度方向の値ということで、「黄経」です。
では黄道座標とはどのようなものかというとこれは、天球上を太陽が一年か
けて移動してゆく道筋、黄道を基準として作られた座標です。
この黄道は地球から見れば太陽の動く道筋なのですが、逆に太陽から見れば
太陽の周りを地球が一年かけて巡ってゆく道筋にあたります。要するに地球
の軌道面を表しているのです。
基準となる黄道は黄道座標における緯度方向の成分である「黄緯」は 0°で
す。太陽はこの黄道を巡るように見えますから、太陽の黄緯はいつも 0°。
よって、太陽の位置を表すのに黄道座標を用いれば、その位置はいつも経度
方向の成分、黄経だけで言い表せて大変便利です。
そして、便利なので昔から使われてきたわけです。
◇黄道と黄道十二獣帯
昔から太陽の位置を表すのに黄経を使っていたことは説明しましたが、現在
のように、
「今日の太陽黄経は××°だ」
なんていえるようになるためにはそれ何の測定装置を作る必要がありますか
ら、大昔からそんなことができたわけではありません。そこでこうした測定
装置が作られる前には、太陽が昇る直前や沈んだ直後の空をみて太陽がどの
星座にあったかを確認して、太陽の位置を知りました。
このため、星座はたくさんある中で、黄道に沿って存在する12の星座は特に
重要な星座で、黄道十二星座とか黄道十二獣帯とか呼ばれてきました。
なぜ獣帯というかというと、その十二星座のうちの多くが動物の名前を持っ
ている星座だからです。ではどんな星座があるのかというと、
おひつじ、おうし、ふたご、かに、しし、おとめ、
てんびん、さそり、いて、やぎ、みずがめ、うお
の十二です。どこかで見たような・・・。そう、星占いで登場するあの12の
星座です。昔の人たちは太陽がどの星座にあるかを知ることで、その日がど
の季節なのかということを知りました。そしてその人が生まれた時に太陽が
あった星座がその人の運命を握る星座だと考えて、誕生星座の考えが生まれ
たのでした。
現在、黄道十二獣帯の星座はただ星占いにだけ用いられる存在となってしま
いましたが、昔は暦の役割を果たしていたことになります。
◇星座から、座標へ
現在でも太陽の位置で暦と季節を結びつけることは行われているわけですが、
昔と変わった点といえば、それは星座を使うことから座標値を使うようにな
ったということでしょう。
ちょっとつまらなくなったような気もしますが、星座はその大きさがまちま
ちですから、精密な位置を表すには不向き。天文学、暦学が高度化すれば、
いつまでもおおざっぱな星座による位置の表し方ではすまなかったわけです。
そして現在、「太陽の中心の黄経が80°となる日」は暦の上の入梅の日とさ
れるようになり、本日がその「暦の上の入梅の日」ということになります。
昔ながらの星座による表し方をすれば、太陽はおうし座にあるということも
できます。
どっちの言い方が、お気に召すでしょうか?
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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