日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■夏暑いのは、太陽に近いから?
インターネットでWeb サーフィン(と、今は言わないのかな?)していると、
とあるサイトで、
季節によって気温が変化するのは、
地球の軌道が円ではなく楕円だからです。
と書いてありました。「目が点になる」とはこのことか。本当に目が点にな
ってしまっていたかもしれません。
もしかしたら、ジョークサイトでどこかにネタバラしが有るのでは無いかと
思いましたが、どうやらジョークでは無かったようです。
ジョークだったらよかったのに。
◇太陽からの距離の変化と気温
季節による気温の変化は地球と太陽の距離の変化で起こるのではないことは
ご存じのことと思いますが、敢えて地球と太陽との距離の変化と気温の変化
について考えてみることにしましょう。
確かに地球の軌道は円軌道ではないので、太陽に近い時期と遠い時期が存在
します。太陽に一番近付いた場所を、近日点、遠い場所を遠日点といいます。
「日(=太陽)」に近い点だから近日点、遠い点だから遠日点。判りやすい
ですね。
さて、地球の近日点と遠日点での太陽までの距離はというと、
近日点における地球・太陽の距離 ≒ 1億4700万km
遠日点 〃 ≒ 1億5200万km
その差は何と、 500万km。地球と月の平均距離が38万km程ですから、その13
倍も変わるのです。こんなに変化するのなら気温に変化を与えてもおかしく
は無いですね。と言いたいところですが 500万kmと言わずに、変化の割合で
言えば、
近日点での地球は、遠日点でより 3.3%太陽に近い。
と言い換えると、なんだか急にたいしたことが無い気がしてきます。
太陽から地球へ降り注ぐ太陽のエネルギー(光の)はどう変化するかという
と、この量は太陽までの距離の二乗に反比例しますから、遠日点で地球へ降
り注ぐ太陽のエネルギーを 100とすると、
近日点で地球に降り注ぐ太陽エネルギー
= 100 * 1.033 * 1.033 ≒ 106.7
増加量は6.7%ということになります。確かに近日点の方が太陽から受けるエ
ネルギーの量は増えるのですが・・・。この6.7%の増加を多いと思うか少な
いと思うか。
◇地球と太陽との距離で「季節変化」は説明出来ない
地球と太陽との距離の変化で地球に降り注ぐ太陽のエネルギーの量には変化
が有りますが、これでは地球の季節の変化を説明することは出来ません。だ
って、地球と太陽の距離の変化は北半球と南半球との区別など無く同じに起
こるのですから。
よく知られるとおり、北半球と南半球では季節が逆になります。北半球が夏
なら南半球は冬という具合ですね。
もし、地球上の季節の変化が太陽からの距離によって起こるとしたら、地球
が近日点付近にあるときには、北半球でも南半球でも「夏」になり、遠日点
付近では「冬」にならなくてはならないことになります。実際の季節の変化
のように北半球と南半球の季節が逆になることの説明出来ません。
◇季節変化は「自転軸の傾き」が原因
地球上に季節変化が起こる最大の理由は、地球の自転軸が地球の公転面(地
球が太陽の回りを巡る軌道面)に対して直交していないからです。傾きの角
度は約23.4°。
この傾きによって、地球上の或る点での太陽の南中高度角(南半球では北中
高度角)は一年の間に、46.8°(=23.4°× 2)も変化します。
地球の表面(大地)が太陽から受ける単位面積当たりのエネルギーは、
sin(太陽高度角)
に比例します。単純に太陽の南中高度で計算してみることとして、東京での
太陽の南中高度を調べてみると、
東京での冬至の頃の太陽南中高度 ≒ 30.9°
〃 夏至 〃 ≒ 77.8°
では、夏至の時期に大地が受ける単位面積当たりの太陽のエネルギーは冬至
の時期を 100とするとどれくらいになるかというと、
東京の夏至の時期における大地が受ける単位面積当たりの太陽エネルギー
= 100 × sin(77.8°) / sin(30.9°) ≒ 190.3
何と 90%以上のアップです。ほとんど倍。
これは太陽の南中時刻だけの比較ですが、さらに夏至の頃は冬至の頃に比べ
ると太陽が地表を照らす時間も長いので、その効果も考えれば効果はより大
きなものになります。
既に書いたとおり、地球の自転軸が公転面に対して傾いているため、地表面
と太陽の成す角は一年の間に大きく変化します。そしてこれが地球上で季節
の変化が起こる主な理由となるのです。
本日の話は、多分皆さんが学校の理科の時間に学習したはずの内容ですが、
その時代から月日が流れて記憶があいまいになってしまった方のためにおさ
らいです。
お子さんに聞かれて、「地球と太陽の距離が変わるからだよ」なんて答えな
いためにもう一度思い出してくださいね。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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