日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■月齢と潮名
Web こよみのページの中でもよく利用されるコーナーに
月齢カレンダー ( http://koyomi8.com/moonage.htm )
があります。
ここのオプションの「潮名表示」と云うチェックボックスにチェックを入れ
ると、月齢の下に「潮名」が表示されます。
潮名とは、大潮とか、小潮、中潮・・・など海辺の地域では昔から使われて
いた潮汐の様子を示す名前です。
この潮名に関しては時折、「間違っています」という指摘のメールを頂くこ
とが有ります。大体この指摘の元になるのは、釣具店などで手に入る潮位表
に書かれた潮名と違っているというものなのです。
◇潮名とは
潮位表やこよみのページで表示している「潮名」ですが、これは既に書いた
とおり、昔から海辺の地域の人々(主に漁師さん)が潮の具合を言い表すの
に使った言葉です。
ご存じの通り、漁獲量(特に沿岸の漁においては)と潮の状況は密接に関係
していますから、潮の状況を的確に捉えることは重要でかつ、あたりまえの
ことだったのでしょう。
言ってみれば、我々が今日が何曜日かを知っているように、今日の潮、明日
の潮の状況を漁師さんたちは知っているわけです。
この漁師さんたちにとっての曜日のようなものが「潮名」です。
ここでよくある誤解が、潮汐の変化は日本全国どこでも大体同じだろうとい
うもの。これが結構困りものです。
潮汐は月や太陽の位置と密接に関係しているのは確かなのですが、潮汐の状
況はそれだけで決まるわけではなく、その地域の海底の様子、周囲の海の深
さや海峡の広さなど様々な要因で驚くほど大きく変化します。
つまり漁師さんたちが使う潮名は、その地域独特のもので、日本全国一律に
使えるものでは無いのです。
大潮や小潮に関しては、その周期中でもっとも一日の潮位差が大きい日、小
さい日と言うことなので、数値的にも示すことが出来ます(そのため、潮汐
学的にもはっきりと定義出来るものです)。が、若潮とは、長潮とは・・・
と言われると、言い習わされた場所毎に日付も、あるいはその言葉自体が指
す意味も違っていることがあって、一律にいつが「若潮か」何て言うことは
決められません。困りましたね。
◇潮名とはどうやって決められるのか?
潮名については地域ごとにきめ細かく決めるというのが理想でしょうが、な
かなかそうもいきません。
そうなると、あとは
呼び名とその平均的な状況
を見つけてそれを何時にするかと言うことを考えるしか有りません。
細かな差には目をつむって、大体の目安を示すというわけです。
さらにこれを何らかの方法で「計算値」と結びつける必要がありますが元々
がそれぞれの地域に住む方々が経験的に決定していた名前ですので、使って
いるかたに、「どうやって計算しましたか」と尋ねたところで無駄。
仕方なく、現象からその現象に近い状況の関連する指標でこれを表すことに
なります。そして主に使われるのが、月と太陽の黄経差。
平たく言えば月の満ち欠けの具合です。
この方式をとったのが、最初に採り上げた「潮位表」など。この潮位表は気
象庁の潮汐参考資料でその黄経差を定めています。
同じようにこの黄経差を用いて情報を提供しているのが、財団法人日本水路
協会海洋情報研究センター(MIRC)。
同じように黄経差を用いていても両者の定義には違いがあります。この辺が
一律に潮名をつけることの難しさの現れです。
これに対して、昔の人はこの潮名を旧暦の日付と結びつけて呼んでいたとい
うこと(これも、月の満ち欠けの様子を表します)から、定義付けしたのが
私のこよみのページ。
こよみのページとしては、元々が旧暦日で決めていたものならそれに合わせ
る方が伝統的なものと云えるのではないかと考えたのです。
(ただ、旧暦日そのままではなくて、月齢を当てはめましたが)
気象庁方式にせよ、MIRC方式にせよ、こよみのページ方式にせよ、考え方自
体は同じなのですが、それぞれの呼び名の区切りをどうするかで、
微妙に違う
結果となります。
ですからどれが正しく、どれが間違っているとはなかなか言えません。
まあ、あくまでも目安として使って下さいとしか言えないのです。
◇潮名の定義について
潮名は元々が各地で経験的に決められたものなので、それをあつめて定義を
作っても、その定義にはこれを決めた人の考え方が出てしまって一義には定
められません。
参考までに、今回取り上げた3つの定義を書いておきます。
何かの参考になると思います。
(ちなみに、こよみのページの定義は、月齢カレンダー解説のページに書い
ています。 ⇒ http://koyomi8.com/moonage_doc.htm )
潮名 MIRC方式 気象庁 こよみのページ
(黄経差) (黄経差) (月齢)
大潮 343°〜 31° 348°〜 36° 29〜 2
中潮 31°〜 67° 36°〜 72° 3〜 6
小潮 67°〜103° 72°〜108° 7〜 9
長潮 103°〜115° 108°〜120° 10
若潮 115°〜127° 120°〜132° 11
中潮 127°〜163° 132°〜168° 12〜13
大潮 163°〜211° 168°〜216° 14〜17
中潮 211°〜247° 216°〜252° 18〜21
小潮 247°〜283° 252°〜288° 22〜24
長潮 283°〜295° 288°〜300° 25
若潮 295°〜307° 300°〜312° 26
中潮 307°〜343° 312°〜348° 27〜28
◇ついでに
この際、こよみのページの月齢カレンダーにMIRC方式、気象庁方式、こよみ
のページ方式を切り替えるためのオプションを付けておこうかとも思ってい
ます。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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