日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■桐始めて花を結ぶ
本日から大暑の期間に入ります。
二十四節気をさらに細分化した七十二候では大暑の初候、七十二候全体では
三十四番目にあたる
桐始めて花を結ぶ (きりはじめて はなをむすぶ)
の季節となりました。
◇桐の花?
「桐始めて花を結ぶ」と有ります。
桐の花と言えば、薄紫色のきれいな花で、 5月頃に咲くものです。
その桐が今頃「始めて花を結ぶ」というのはどうも変ですね。
何かの間違いでしょうか?
七十二候は元々は中国で生まれたもので、それが輸入されたものですから中
には日本の風土に合わないものもあって、そのため日本に入ってから何度か
日本風の七十二候が作られており、こうしたものを「本朝七十二候」などと
呼びます。日本生まれの七十二候という意味ですね。
今回採り上げた「桐始めて花を結ぶ」も本朝七十二候の一つ。江戸時代の初
期に作られた貞享暦(じょうきょうれき)から採用されています。
中国直輸入の七十二候であれば、中国と日本の風土の違いで説明をつけるこ
とも出来ますが、本朝七十二候と言うことならそういうわけには行きません。
江戸時代とでは気候が違う・・・とも言えませんからね。
なんだか変なこの言葉の謎は、何のことはない「桐」の違いでした。
桐は桐でもこの桐は梧桐(あおぎり)。
桐とは違う植物のことのようです。
◇梧桐
梧桐は青桐とも書きます。その名の由来は若い木は大きくなってもその幹が
緑色をしていることからだと言われます。
その大きな葉っぱは確かにどことなく桐の葉っぱに似ていなくもありません
ので、梧桐と呼ばれるようになったようですが、植物学的な分類では全く別
の植物で、桐の仲間ではないそうです。
肝心の花の咲く時期ですが、現在はだいたい 6〜 7月頃。
これもちょっとずれているようにも思えますが、まあ誤差の内でしょうか?
梧桐は生命力旺盛で、伐られても切り株から蘖(ひこばえ)となってすぐに
成長を始めるほどで、庭木や街路樹に使われることがありますので、皆さん
も身の回りを良く見回せばこの木を見つけることが出来ると思います。
いまは、「桐始めて花を結ぶ」時期なので花も見えるはずですが、花は白く
小さく、あんまり花という感じの花では有りませんし、背の高い木では大き
な葉っぱの陰に隠れてしまって目立たないかもしれません。
梧桐ってどんな木? と思う方は、
『白岩先生の植物教室』・・・アオギリ
⇒ http://www.kobe-c.ed.jp/shimin/shiraiwa/aogiri/aogi0.html
などをご覧ください。
◇それでも気になる季節のずれ?
桐始めて花を結ぶの桐が、梧桐だと言うことでひとまずは問題解決ですが、
それでもちょっと気になります。
梧桐の花の咲く時期は現在はだいたい 6〜 7月頃。「始めて花を結ぶ」と言
うには今の時期は遅すぎるような気がしませんか? (それは、新暦と旧暦
の差では・・・なんて言わないでくださいね。二十四節気や七十二候は、太
陽の位置に基づいているので、新暦も旧暦も関係ありません)
もしかしてと思うことは、この言葉が採用された貞享暦が生まれた時期は、
天文学上ではマウンダーの極小期と呼ばれる時期に一致することです。
マウンダーの極小期とは、AD1645〜1715年の太陽黒点数が極度に少なかった
時代のことで、この期間は地球全体の気温が低下した時代だとされています
(「マウンダーの小氷期」と呼ばれることもあります)。
もしかして、今より寒かったこの時代、本当に梧桐の花の咲き始める時期は
今頃だったのかもしれませんね。
あくまでも私の想像ですが。皆さんはどう思いますか?
気になるので、また機会が有れば調べてみたいテーマです。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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