日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■イスラム暦と月の初見
> 『イスラム暦の暦月は新月後の月がその日の始まり(つまり日没)後に
> 最初に見えた時に切り替わりますから、この夕方に月が見つからないと、
> ラマダーンあけは一日先に伸びてしまいます。そうならないことを祈り
> ます。』
>
> とありますが、具体的に言いますと、月影を目視することが出来なかった
> 場合は、月の始まりが一日ずれる事になるんだと思われますが、
>
> (1)その観測は何処で行っているのでしょうか。
> (2)曇天等で観測不能の場合も同様に取り扱われるのでしょうか。
>
10/12 号に書いた暦のこぼれ話に対する御質問をT.Mikiさんから頂きました。
我々の使っている「計算だけ」で求められる暦とは異なるイスラム暦のはな
しなので追加的に少々書かせて頂きます。
◇月の初見はどこで、誰が観測するのか?
「どこで」については、中東アジアと日本では当然時差もあり、場合によっ
ては月の初見日も地域によって変化してしまうはずだから、どこかでまとめ
てこれをしているのかと言う意味も含まれていると思います。
この疑問に対する答えは、「それぞれの場所で行う」というものになります。
とは言え、大体は国などの一つの行政区画毎でまとめているようです。
ですから日本なら日本の月の初見となります。マレーシアではイスラム暦の
運用は各州のスルタン(太守)に任されることになっているそうなので、州
毎にイスラム暦の日付がずれる例があります。
誰がと言う問いに対しては、その地域を統括するイスラム教の権威当局が任
命した新月実視委員が行うようです。見えそうな場所に何人かずつ派遣して
月を探し、複数人が確認したときを「新月の初見」とします。
熟練した新月実視委員の目は確かなのでしょうが、それでも見落とす例が無
いわけではなくて、物議を醸し出すこともあるそうです。
◇曇天の場合にはどうなる?
曇天で月が見えない場合も条件は同じ。今日見えなければ明日ということに
なります。
この点では比較的雨が少なく曇天の確率の低い国々が有利。日本はその点で
恵まれない国と言えます。
ただしいつまでものびるかというとそんなことはありません。国中が曇りと
言うようなことはそうそう起こりませんから。また実際に見えなくとも計算
された日付から二日以上ずれる場合はその日から月が始まるなどの運用も行
われているようです。これは要するに、暦の決定公表というものはあくまで
も「権威者」に与えられた権限なのだということですね。
イスラム教圏の国々でも、イスラム暦とは別の日常の暦を持つ国は多くあり
ます。ただし、ラマダーン(断食月)の始まりや終わりと言った宗教的に重
要な意味を持った日取りの決定には今も、「月の初見」といった現実の観測
が重要視されます。
人間の都合より神との約束と言うことなのでしょう。すごいなと思います。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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