こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■師も走りだす月、「師走」
 日本古来の月の呼び名を和風月名(わふうげつめい)と呼びます。
 和風月名の中にはもうあまり聞くこともなくなって、聞いても一瞬何月を表
 す言葉かピンと来ないものも増えてきました。一月から順に言ってみてくだ
 さいといわれたら・・・スラスラと出てくる方は少なくなったのでは?

 そうした中で十二月を表す言葉「師走(しわす)」は今でも根強く生き残っ
 ているものの代表格ではないでしょうか。


◇師も走る月だから「師走」?
 経をあげるために師僧が東西を馳(は)せ走る月であることからシハセ(師
 馳)の義 ・・・ 奥義抄

 というのが一般にいわれるところの師走の語源です。ここでいう「師」は法
 師の師と言うことになりますね。他には、普段はゆったりと構えている師匠
 たちも、この月ばかりは忙しく立ち働くため師走だなどともいいます。
 どちらも、いつもは忙しく走るようなことのない法師や師匠と言った人たち
 ものんびりしていられない忙しい年の瀬と言うことで、この名が出来たとす
 る説です。

 大変わかりやすく、またお坊さんが走り回るという普段では考えられない姿
 を想像するとなんだかおかしくて、印象に残りやすい言葉ですね。


◇師走の語源
 師走という言葉は日本書紀にも登場する古い言葉です。
 日本書紀が書かれた時代と言えば、仏教が伝来して間もない頃。当時の寺や
 僧侶は国家の庇護と統制のもとにありましたから、これを考えると年末にな
 って僧が忙しく走り回ると言うことはどうも無さそうな話です。
 多分、元々あった言葉に後世「師走」と借字されたものと考えられます。
 ではその語源はというと、次のような説があります。

 ・四季の果てる月であることから、シハツ(四極)の義 『日本釈名』
 ・トシハツル(歳極・年果・歳終)の義 『和訓栞』
 ・ナシハツルツキ(成終月)の略転 『柴門和語類集』
 ・農事が終わり、調貢の新穀をシネハツル月であることから『兎園小説外集』
 ・稲の無い田の様をいうシヒアスの約。
  等々

 師走は既に書いたとおり古い言葉ですからその語源は、時間の霧の向こうに
 あって見定めることは難しいものですが、どれを見ても仕事や一年と言った
 サイクルの終わりの月という意味で使われていたものだという点では一致し
 ているようです。

 こうしたことから現在でも、一年の終わりの月という意味で使われ続けてい
 るものと思われます。一年の終わりということですから、他ではとかく問題
 となりがちな新暦と旧暦のずれは問題とならないようです。

◇和風月名
 最後におまけとして、和風月名を並べてみます。
 
  一月  睦月、  二月  如月、  三月  弥生、  四月  卯月
  五月  皐月、  六月  水無月、 七月  文月、  八月  葉月
  九月  長月、  十月  神無月、 十一月 霜月、  十二月 師走

 さて、全部よめましたか?

 (むつき、きさらぎ、やよい、うづき、さつき、みなづき、ふづき、はづき、
 ながつき、かんなづき、しもつき、しわす)


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック