日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■暦が生まれるまで(その2)・わかりやすい仕組みを求めて 暦が生まれるまでとして、不定期に書き始めたこの話、本日は 2回目となり ます(前回は2008/01/24日号)。 本日の話は、「わかりやすい仕組みを求めて」です。 ◇暦とカレンダー 現在、暦(こよみ)と言う言葉を使うときに皆さんが思い浮かべるものは何 でしょうか? 多くの方が思い浮かべたものは、一月毎にまとまっていて、曜日が並んだカ レンダーではなかったでしょうか? 私も暦と言われるとカレンダーを思い浮かべることが多いです。私の場合、 暦の話が趣味みたいなものなので、「普通の方」には入れられないかもしれ ませんが、そんな私ですらそうなのですから、きっと「普通の方」はカレン ダーを思い浮かべられたこととして、勝手に話を進めたいと思います。 現在日本で使用されている暦(新暦)に対する旧暦擁護派の言い分の中に、 「新暦はただの曜日の繰り返しを表した表に過ぎず、人間の生活に密接に 結びついた自然現象、季節や天体の運行を表わすことが出来ない。」 といった主張が有ります。この方たちが擁護したい「旧暦」はその点では、 月の満ち欠けという天文現象をよく表した暦で、自然により密着した暦であ るとおっしゃりたいようです。 確かに月の満ち欠けを表す点では、新暦は旧暦に及びませんが、では新暦は 人間の生活に密着した自然現象と切り離された暦かと言えばそんなことは有 りません。新暦は、人間の生活と密接に結びついてきた、季節の動きの元と なる太陽の動きに密着した暦だからです。 そして、これを「単純な曜日の繰り返し表」のような「カレンダー」にまと め得たと言うことは、或る意味暦の完成形の一つに近い形になったのだだと 考えることも出来ます。 ◇ある日の太陽の位置 新暦は太陽の位置をよく表していると書きましたが、どの程度の話なのか確 認するために、実例で見てみましょう。 次に掲げた例は、今日(新暦 1/27、旧暦12/20)の日付での太陽の位置(今 回は、黄道座標の黄経)を前後数年並べて見てみることにします。 (新暦)太陽黄経 (※旧暦 太陽黄経) 2006年 307.0°(2005年 298.9°) 2007年 306.8°(2006年 317.9°) △2008年 306.5°(2007年 306.5°) 2009年 307.3°(2008年 295.1°) 2010年 307.1°(2009年 314.2°) 新暦の日付と旧暦の日付で日付を変えず「年」だけを変えて太陽の位置を調 べてみるとご覧の通り、新暦であれば年毎の差は 1°に満たないですが、旧 暦だと20°以上も違ってしまいます。 ご存じのとおり季節の気候変化の大本は太陽位置の変化によって生み出され るものですから、暦が季節の気候変化を図る指標であるという観点から見た 新暦は大変優れた暦ということが出来ます。 旧暦が「月の満ち欠けをよく表すという点で優れている」というのであれば、 新暦は「太陽の位置、季節の変化をよく表す点で優れている」と言うことも 冷静に認めてあげましょう。 ◇単純な繰り返しの表にしか過ぎないと言う批判 新暦のカレンダーは毎年ほとんど同じ。違う点といえば年毎に日付と曜日の 関係が変わるくらいのことです。曜日さえ気にしなければ毎年同じ暦でもか まわないほどです。閏年が有りますから、平年用と閏年用の 2種類と言うべ きかもしれませんが、違うのは 2月の末日だけですから、(29)とか書いてお けば 1年分で済みますね。細かなことは気にしない気にしない。 さて、曜日さえ気にしなければ毎年同じでもよい単純な「カレンダー」とな る新暦です。これを味気ないという方もいらっしゃいますがこれは好みの問 題。暦としてみるとこの単純なカレンダーで、上述したように正確な季節の 変化(太陽の位置変化)を表せることが、実は優れたところなのです。 旧暦も一年一年で見ると暦の日付と太陽の位置の関係がまちまちになります が、数年、十数年という長い目で見れば或る程度の範囲に収まるような仕組 みを作っています。ですが、その仕組みは複雑で、普通の人にはまずわかり ません。 来年の旧暦のカレンダーを作ってみましょうと言われても、おいそれとそれ が出来るものでは無いのです。 カレンダーの用途として、先々の予定を組んだり、過去にあった出来事を集 計する為に使うということは頻繁に行われることで、大変重要な用途です。 この用途を考えると、 誰でも簡単に作れて、かついつも同じ単純なカレンダー というのは一つの理想型であって、欠点とされるべきことでは有りません。 暦の歴史は、ある意味複雑な現象を如何に単純な仕組みで実現するかという 人間の工夫の歴史だとも言えます。 暦の成り立ちを考える上では、こうした視点を忘れてはいけないと思いまし たので、今日はこんな話を書いてみました。
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