こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■旧暦の「閏」
 3/11号で、朝日新聞(後で日本経済新聞も加わりました)の明日の暦の旧暦
 の欄に

  旧閏2月

 とある件を話題にしました。理由は「閏」でもないのにそれが書かれている
 ので間違いだという事でした。結局この指摘から両紙のこの欄の記載が修正
 されて大団円となったのですが、この旧暦の「閏」の意味がよくわからない
 というメールがいくつかありましたので、これに答えるのが本日のこぼれ話
 です。

◇まずは「閏」について
 「閏」の音読みは「ジュン」、訓読みは「うるう」です。
 この訓読みについては閏を「潤」と書き誤ったものを読んだ結果だとされて
 います。「潤」は「潤す(うるおす)」ですね。
 さて、では暦の上での閏の意味ですが簡潔な説明としてここでは広辞苑の説
 明を引用させて頂きます。

 【閏】(うるう)
  (「潤」と書き誤ったところからの訓)
  季節と暦月とを調節するため、平年より余分にもうけた暦日・暦月。
  地球が太陽を 1周するのは365日5時48分46秒だから、その端数を積んで、
  太陽暦では4年に1回、2月の日数を29日とし、太陰暦では平年を354日と定
  めているから、適当な割合で 1年を13ヵ月とする。
   《広辞苑・第五版より》

 現在使っている暦(新暦・グレゴリウス暦)ではほぼ 4年に 1度の割合で 2
 月に平年にはない29日という日が現れ、これを「閏日(うるうび)」と呼ん
 でいます。

 これに対して、旧暦と呼ばれる暦は太陰太陽暦という暦の一種で、こちらに
 はおよそ 3年に一度の割合で「閏月(うるうづき)」と呼ばれる十三番目の
 月が登場します。

 なお、普通の年には無い余分な日や月である「閏日」「閏月」が登場する年
 を「閏年(うるうどし)」、それ以外の普通の年を「平年(へいねん)」と
 呼びます。閏日や閏月は余分な日、月ですが、閏年は余分な年では有りませ
 んので誤解しないでくださいね。


◇旧暦の閏月
 さて今回の話は旧暦の閏月についてです。
 現在使われている太陽暦では一年は毎年必ず12ヶ月ですが、旧暦のような太
 陰太陽暦の場合は、時折一年が13ヶ月になることがあります。
 その理由は、暦の一月が月の満ち欠けの周期である 29.53日に基づいて作ら
 れているためです。この満ち欠けの周期を12倍すると、

  29.53日 × 12ヶ月 ≒ 354 日

 となります。一年の長さは約 365日ですから、月の満ち欠けの周期の12回分
 では一年の長さにおよそ11日足りません。ですから、一年を月の満ち欠け12
 回(12ヶ月)で数える暦を作ると、暦の月日と季節の巡り(一年)の関係が
 
  1年で11日、3年で33日、8年で87日、33年で359日、・・・

 とずれてしまいます。つもり積もれば33年でほぼ丸々 1年に近い長さにまで
 ずれてしまいます。正月は冬だと思っていたら、8年経つと正月が秋になり、
 更に8年経つと正月が夏になり・・・と言う事になってしまいます。
 こんな暦では不便だという事で、考え出されたのが「閏月」という余分な月
 です。

 上の例で見てください。暦と季節の巡りの差が 3年で33日となっています。
 この長さはおよそ 1ヶ月の長さに相当しますから、このタイミングで一月余
 分な月を挿入してやれば、暦と季節のずれを有る程度解消する事が出来るよ
 うになります。こうして生まれたのが閏月です。

 ではいつ閏月を入れるのかということが問題になりますが、この辺の話は少
 々込み入ってきますので、興味のある方は、Web こよみのページの

  旧暦の月の決め方 ・・・ http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0101.htm

 をお読みいただくことにして、ここでは省略させて頂きます。
 なお、よく閏月は「何年か毎の何月が閏月」と決まっていると思っている方
 がいらっしゃいますが、これは誤解ですので、ご注意を。


◇閏月とそうでない月との関係
 「一年は十二ヶ月」が基本ですので、一年の月は正月〜十二月までの12個。
 閏月が挿入されると、一年の終わりは十三月となるのかというと、そんな事
 は無くて、やはり最後は十二月です。ではどうなるのかというと、

   正月、二月、三月、閏三月、四月、・・・

 と言う具合になります。上の例では三月と四月の間に「閏三月」という月が
 挿入されています。本来閏月は臨時に生まれる余分な月で名前が有りません。
 そこで、前の月の名前に「閏」をつけて呼ぶ事になっています。

◇間違いだとわかりやすかった今回の間違い
 今回の朝日新聞等の誤りの「分かり易さ」は実はここにあります。
 なぜなら、毎日の朝日新聞を並べてみると、

  旧1月29日 → 旧1月30日 → 旧閏2月1日 → 旧閏2月2日 ・・・

 となっています。わかりますか?
 そう、1月の次がすぐに、閏2月となっています。もし仮に今回の問題の箇所
 に閏月が挿入される事になっていたとしても、1 月の直後が閏月ならそれは、
 閏1月でなければなりませんし、逆に「閏2月」が正しいのならその直前の月
 は2月でなければなりません。どちらにしても 「1月→閏2月」という並びは
 絶対にないので、一目で「どっか間違っている」とわかります。

 今回の間違いは、朝日新聞、日本経済新聞がともに旧暦の資料として使った
 日本気象協会の資料が誤っていたからだったとのことですが、計算違いと言
 った、計算してみないとわからないような微妙な間違いではなくて、こんな
 「一目見てわかる間違い」がどうして起こってしまったのか・・・。

 単なる「誤字・脱字・冗字」の類の誤りだとしたら、気象協会の方々にも、
 日刊☆こよみのページの優秀な「隅掘り隊」の面々を紹介したいところです。
 隅掘り隊の皆さん、いいアルバイトが有るみたいですよ?


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック