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■今日の「お八ツ」は? お江戸の時刻(その1)
「お八ツ時」といえば現在は午後 3時頃ですね。
そんなことは知っているって? ではこの「お八ツ」が江戸時代に使われた
時刻の表現から生まれたことはご存じですか?
2008/05/28号で、「十二辰刻法」という時刻について書きました。
こちらは子刻とか、午刻などと使う時刻で定時法だという話でした。
(⇒ http://koyomi8.com/sub/doc/mlwa/200805280.htm )
今日は、これとは別の庶民の生活により密着した時刻の話です。
◇時刻は、九ツ→八ツ→七ツ・・・
時代劇などでおなじみの「明け六ッ」とか「暮れ六ッ」などという言葉は人
々の実生活でよく使われた時刻の呼び方です。この時刻は不定時法と呼ばれ
るものの一つで、昼と夜では同じ「一時(いっとき)」でも長さが変わりま
すし、また同じ「一時」でも季節により変化するものでした。今から見ると
不思議な時刻系です。
この時刻系の不思議な点はその数え方にもあります。なんと、
九ツ→八ツ→・・・五ツ→四ツ→九ツ→八ツ→・・・五ツ→四ツ
と数えるのです。何故こんな不思議な数え方をするのかというと、縁起のよ
い陽数(奇数)のうちで最大の「九」の倍数で時刻を数えるのだといわれま
す。最初は九。次はその倍で十八。その次は三倍で二十七・・・。このうち
の十の位を省略して一の位だけで数えると、九・八・七・・・となるのだと
か。いくら縁起がよいからといって、何故こんな数え方をしなければいけな
いのか・・・私には判りません(誰か教えて)。
数え方はおかしいですが、まあひとまずこれで一日は十二時に分割されます。
この文章では、今後この方式での時刻表示法を、十二時点法と呼ぶことにし
ます。
◇時刻の基準は、「夜明け」と「日暮れ」
理科年表の「暦部」を開くと、東京における「夜明け」と「日暮れ」という
値が書き込まれています。日の出・日の入りは別に書いてありますからこれ
とは違います。では何かというと、今でいうと「薄明(はくめい)」と呼ば
れる期間の始まりと終わりの時刻です。
朝日が昇る大分前から外は明るくなりますし、夕方も日没後でも暫くは生活
に困らないほど明るい、こうした日出・没前後の太陽が地平線下にあっても
明るい時間帯を薄明と呼びます。
「夜明け」と「日暮れ」はその薄明のうちで江戸時代の貞享暦で定められた
基準(現代風に解釈すると、太陽中心が地平線下 7°21′40″となる瞬間)
で計算された時刻です。
さて、この夜明けと日暮れの時刻ですが、これが今回の十二時点法の昼と夜
の分岐点とされ、それぞれ「明け六ッ」「暮れ六ッ」と呼ばれました。
つまり夜明け(明け六ッ)から日暮れ(暮れ六ッ)までが昼、それ以外が夜
となります。
十二時点法の始まりとなる九ツはどう決まっているかというと、夜九ツは正
子(子ノ正刻)つまり現代の夜中の零時、昼九ツは正午(午ノ正刻)つまり
昼の12時に始まります。
こうしてみると九ツの始まりは今の時刻とよく合うのですが、途中の六ツは
夜明けや日暮れという季節によって変わる瞬間が起点となっています。とい
うことは、それぞれの間隔である「一時(いっとき)」の長さがところによ
って違っているということ、さらに季節によっても変化するということです。
十二時点法ってなんだか変わっているな・・・と皆さんが思ってくれた(?)
ところで、本日はこれまで。
お約束のとおり、「その2」に続く。
ではまた次回。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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