日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■薬降る日
旧暦の五月五日、端午の節供に降る雨を「薬降る」と呼ぶことがあります。
今年の旧暦五月五日は昨日。本当は昨日書かなくてはならなかったことです
が、今頃思い出して一日遅れでこれを書いています。
ま、そこはこぼれ話。雑談ですから許してください。そして、来年は忘れず
に旧暦五月五日には思い出して、この話をしてくださいね(?)。
◇端午の節供は魔の降る日?
旧暦の五月は雨の月。ものが傷みやすい月、黴びやすい月と言うことでしょ
うか、「悪月」とも呼ばれました。
なにがこの月を「悪月」に仕立てるのかと考えれば、きっとそれはこの時期
に降り続く雨だと考えたのに違いありません。雨は天から降ってきます。そ
の雨が「悪月」を作り出すのだとすれば、それは「魔」が降っているのだと
も言えるでしょう。端午の節供はそうした魔の降る日だったのです。
そして五月は悪月である一方早苗の月でもあります。
田植えの主役である女性達(早乙女)は田植え前のこの端午の節供には、そ
の身を清浄に保つため、忌籠りして魔を避けました。
今でも端午の節供といえば、菖蒲と蓬(よもぎ)を屋根に挿したり、この二
つを束ねたものを屋根に投げ上げたりする風習があります。これは天から降
る「魔」から身を守るための呪いであったと考えられます。
また、菖蒲湯なども穢れを取り除くための禊の一種と考えることが出来ます。
◇五月五日は「薬日」
五月五日は魔の降る日と書きましたが、この日はまた、薬日(くすりび)と
も呼ばれ、山野に出て薬草を採取するという日でもありました。
屋根に飾り、菖蒲湯を作る菖蒲や蓬もこうして集められる薬草の中の一つで
した。
この日集められた薬草は、錦の袋などに詰め、薬玉(くすだま)として邪気
を遠ざけるためにこれを軒や室内に吊り下げておく風習がありました。
この「薬玉」が現在祝い事になどに登場する「くす玉」の元ですが、雰囲気
は大分違っていますね。
◇薬降る
魔の降る日、その魔を避けるため薬玉を作り屋根には菖蒲と蓬を飾ります。
その一方で、この日降った雨が伐った竹の節にたまった雨水を神水と呼び、
この水で薬を溶けば薬効が増すとも言われました。
この日降る雨は魔ばかりでなく、薬でもあったのです。そのためこの日はま
た「薬降る日」ともされました。
魔も神も人間以上の力を持った自然の象徴と考えれば、表裏一体のものと言
えるのかも知れません。魔も一転すれば神となり役立つ薬となる。そう考え
て、あるいは望ましくない魔を役に立つ薬に転ずるための呪いの言葉が薬降
るだったのかも知れません。
さてさて昨日の旧暦五月五日、その日に降った雨は無事に「薬」となって薬
降る日となったでしょうか?
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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